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しんぼるのTのレビュー・感想・評価

しんぼる(2009年製作の映画)
4.5
酷評の嵐。

まずケチをつけましょう。
出だしから、「CUBE」をイキナリ丸パクリします。
そして、この映画に笑いは、一切必要ありません。あくまでもあそこまで台詞を削ったなら、終始シリアスで良かったはずです。

北野監督とよく比較されますが、アウトレイジの一作目など、いつも笑いの現場にいながら、かなりシリアスで静謐な暴力と絞りきったエロスです。
そして、「ビートたけし」ではなく本名を名乗り、普段と違うダークな一面を見せます。
所謂ギャップ萌え。
その辺りがブランディングの上手さで、評価の分れ目でしょうか?



但し本作の四角い箱は、照明と映像処理がキチンとしています。何故なら茶室の室床のように、ただ白い空間になっています。
たしかに直喩的な「シンボル」が壁から出ています。
そして、閉塞した空間の繋ぎめや、広い空間も、「訓練」「実践」と分かりやすくたとえて、さらに子供の天使は、大人の天使となっていきます。

表現の場は、規制自己規制の嵐です。ただあけすけにプライベートを直喩するだけでは、お金はいただけません。

この監督の場合、普段の「笑い」そのものが、非常に暴力的でもあるし、プライベートでも大きなトラブルもなく映画の世界に現れたゆえの、見る側のエフェクト/負のバイアスが少しかかっているのではないでしょうか?

現代アートでも、「コラージュ」なるものは、多々ありますし、
大袈裟な話人類が絶滅した後、異星人がみたら、現在過去ゴッチャになりかねない作品から、NARD文化をただ形をマネて、自己ブランディングしていくようなアートもあります。

そう考えて観ると、以外にシンプルな上、
「天使」なるものの概念が薄い我々には、
分かりやすいのではないでしょうか?
故に制作陣が悩んだ挙句、削っていった気がします。

ただその削りかたがチトまずかっただけと私は思います。

一番好きなシーンは、エンディングに向かう、大人天使の円筒です。流れる曲も動きや美術も、ある種の危なさこそありますがよく出来ています。

そして、最後の「世界地図」と「未来」
のエンディングなどは、「MINDGAME」というアニメとよく似ている。

更に制作、公開時は日本は大不況で、資金調達がかなり、難しかったと思われる。


主人公が登る、円筒にマッピングされた映像は、あのころの時勢を映し出している。


たまに、無性に観たくなる。
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