こういう静かで考えさせられる戦争映画は、個人的に好みです。レビュー数も少なく、盛り上がりに欠ける用にみえますが、訴えかけてくるものはドラマチックに描く戦争作品よりも、ずっとずっと沁みこんでくるものがあります。
テーマは、ドイツ連邦軍によるアフガニスタン駐留の戦争ドラマ。地元の自警団と共に、人々をタリバンから守るという目的でアフガニスタンに向かったドイツ人兵士のさまざまな現実や自身の限界を描いたものです。
映画全体が、ドキュメンタリーフィルムのようなカメラ使いで、ほどよくノーメイクな感じが好みでした。夜のシーンは、照明ではなく暗視カメラ越しの映像だったので、そういう所もリアリティがあって良かったと思います。
緑もなにもない、土に囲まれたアフガニスタンの村に、5人の兵士だけで乗り込むって、ものすごい恐怖感があるなと感じます。あからさまな戦闘シーンは少ないのですが、常にどこからか銃で狙われているような静寂の中の恐怖感の表現が見事でした。1箇所だけある戦闘シーンも迫力がありましたね。それは、徹底してドキュメンタリー風に描いた事で、画にリアリティが感じられたのではないかと思いました。
根底に潜むテーマも良かったです。
ほとんど説明が無いのですが、様々な矛盾と葛藤が盛り込まれています。
民族や文化の違い、価値観の違い、思想・哲学の違い。
自警団と共に村を守るドイツ兵の苦悩が、よく伝わってきました。
主役のドイツ兵キャプテンの身の上と、通訳の青年の身の上がクロスするようなストーリーも自然で良かったです。
なんとも虚しさの残るラストではありますが、安保法制などで混乱する日本国内。
私たち日本人も、観て考えさせられる映画のようにも思います。
なかなか、いいです。