青の

最後の1本 ペニス博物館の珍コレクションの青ののレビュー・感想・評価

3.5
【星条旗】

パッと見で既に奇妙で珍妙だけど、関わる人々は真剣で大真面目。
ニヤけたり照れたりな表情が一切無い(のような印象)。


アイスランドに世界で唯一の性器(ペニス。陰茎、精嚢、睾丸)博物館がある。
館には世界中ありとあらゆる哺乳類のペニスが陳列されている。
その博物館の設立者シグルズル・”シッギ”・ヒャールタルソンは野生動物の研究や書籍の翻訳もしており、著書は22冊にもなる。氏は明らかに識者で学者である。
その知の探究の最たるテーマに、ペニスの収集があるのだ。
おふざけでもないし、ただのコレクターでもない。

その氏も40年以上もの研究と収集を続けていたが、やはり最後の1本『人間、ホモ・サピエンスのペニス』がどうしても手に入らない。
これがエログロなホラー映画であれば、手段は一つだが、今作はドキュメンタリーである。
当たり前だが、法律的にも正式な手順を経ての提供でなければならない。


個人的には「死んだ後なら切るなり取るなりご自由に」って思ってしまうが、海外(アイスランド)では死体にチンチンが無い=恥となるようで、同意を得るハードルがかなり高いようだ。
そして、ペニスと認定される法的な定義(これはちょっと理解に苦しむ。民間伝承が理由?)もあるようで、12.5センチ以上でなければならいとか(加齢や死後硬直で縮んでしまう)。

で、ひたすら提供者を待つしかない氏の元に朗報が。
2名の提供者が現れたのだ。
「さんざんヤリまくったし、死んだら用無しよ」という老人。
「ワイのデカチンを生きているうちに提供して、皆んなに見てもらいたい。ちな、エルモって名前付けとる」というカウボーイのオッサン。
映画は中盤からこの2人に焦点が…。



館長自身のじゃダメなん?とか思っていたが、献身的で氏の研究にも理解のある奥様だし、18歳からのお付き合いで今もラブラブなご様子。
こりゃ自分のを提供するにはまだ早いなと納得。
ただ、終盤にはある覚悟も見せる。

また、今作の中で1番ヤベー奴はやはりエルモのオッサン。
自分を客観視できない、まあまあのサイコパス味がある(離婚3回ってのも頷けるし、なにより星条旗とか…アホなのかとw)。

そして、ヤリチン爺さん。
「縮んじゃったよ…」はちょっと眼頭が熱くなった。
かつての栄光と悲哀のギャップが切な過ぎる。
儚き人生の最後に何か生きた証をって、今作のテーマでもあるような気がする。
「家畜も家族もいずれ死ぬ だが勝ち得た名声は永遠なり」-オーディーンの訓言-
映画冒頭の字幕と相まって胸熱である。

その言葉を巡らせながら、ラストのチンチン像とともに空を仰ぐ館長の姿には感銘すら受ける。




ドキュメンタリー撮影時、氏は60代半ば。現在もお元気であれば一度日本に来ていただき、川崎市の金山神社で執り行われる『かなまら祭り』を楽しんで欲しい。
そして白子(できたら唐揚げを。サクトロで美味い)を食してもらいたい。
焼肉ならホーデンって部位もある。

ちなみにU-NEXTで視聴。
ボカシ等一切無いので苦手な方はご注意を。
青の

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