まりも

徘徊 ママリン87歳の夏のまりものレビュー・感想・評価

徘徊 ママリン87歳の夏(2015年製作の映画)
3.6
ママリンかわいい人だ。感激屋さんで発する言葉がおもしろい。不穏になってドアを叩く音が拍子を取っていて可笑しい。太鼓じゃないんだから。
娘さんの大変さはわたしも身を持ってよくわかります。が、けっこう言っちゃいけないことを言ってしまっていると思う。このぐらい認知が進んでしまっている人には真実を伝えることが正しいとは限らない。その人が信じている世界、納得できる世界に付き合うことが、安心させて結果的に問題症状が落ち着くことにつながる。
娘を、もう娘と認識できないのであれば、『娘じゃないけれどなんとなく信頼してもいいかな?と思える人』、にならなくてはならない。夫が死んだことを信じないのであれば、位牌を見せて驚かせるよりも、『今は会社に行っている』と言って安心させてあげた方がずっといい。夕方になったら、『お父さん飲みに行っているから、こっちも飲んじゃう?』と言ってもいい。そうやってやり過ごし続けるのだ。自分も垣根を越えたらなんとかなる。
無意識に上からの態度を見せちゃうと、ちゃんと相手に伝わってしまう。大坂人らしくおもしろくしているが、言葉の端や表情、貧乏ゆすり、顔を見ない話し方にイライラが出ているからママリン全部わかっている。なぜ家を刑務所と思うのか?頭がパーになっているからではないと思う。
ボケてもこんな風に自分をしっかり持っている人はなかなか死なない。認知症のタイプにもよるが、従順なおとなしい人は全て受け入れてすぐ死んでしまう。
いずれにせよ必死に生きている。

撮り方がどちらかの肩を持たずにいるところに好感を持ちました。
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