暴力と破滅の運び手

マシュー・ボーンの「白鳥の湖」3Dの暴力と破滅の運び手のレビュー・感想・評価

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不適切な表現をあえて使わせていただくならちょっと男らしくない王子(母からの愛情を十全に感じられないことをコンプレックスにもつ)が自殺しようとしていたところをアルファ雄(白鳥のすがた)に救われるのだが、舞踏会で再び現れたアルファ雄が母にご執心で自分とはこっそりしか会ってくれないもんだからアルファ雄と母親両方への嫉妬で狂ってしまい…というとんでもないバレエ《白鳥の湖》の翻案。同性愛の抑圧や偽装恋愛、そして同性愛治療によって起きる悲劇…。父親が完全にいない世界観なので、原典でのオデット/オディールであるところのザ・スワン/ストレンジャーが王子の運命の人かつ母親を奪う存在としての父、という凄まじい感じになっている。
……みたいなところもありつつ、やっぱりバレエはバレエなのでパ・ド・ドゥとかで素朴に感動できるのがミソだと思う。10月の新演出映画版も楽しみ。