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コスモスのMCATMのレビュー・感想・評価

コスモス(2015年製作の映画)
4.0
借家の軒先に青いケーブルで吊るされた雀を見た時から、形而上の世界が少しずつ現実を侵食し始め、主人公の言動も周囲のそれも果たして何を言っているのか判然としなくなるのだが、それでも不思議と狂気は感じられない。微妙に失調し続ける現実と、登場人物たちがほのめかす演劇的現実の針がピッタリと合っている、そんな雰囲気がそこはかとなく冷えた画面の安定をもたらしているようにも感じる。ズラウスキーの遺作となった2015年の作品『コスモス』。ゴンブローヴィッチの同名小説を原作としているが、作中でゴンブローヴィッチの引用が為される時点で、本作のねじ曲がり具合が想像出来るだろう。

主人公ヴィトルドは、借家オーナーの娘レナの美しさに狂おしいほど惹かれ、惹かれると同時に詩的で曖昧な文句を並べ立ててその気分を撹拌させようとするのだが、一方で唇のねじれた女中・キャサレットに執着する友人・フックスの陰謀論めいた説によって、この土地に根ざした謎が物語の一つの軸として浮かび上がってくる。その軸に沿った形で展開していく物語は、あまりに不条理な腰砕け状態で放棄され、出奔するように土地から逃れようとする人々は「より大きな獣」として、妄想の中に閉じ込められてしまったように見える。

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