birichina

緑はよみがえるのbirichinaのネタバレレビュー・内容・結末

緑はよみがえる(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

まじめな作品、楽しいとは言えないが見る意義がある。

舞台:第一次大戦、イタリア北西部のアルプスにある高原(アジア―ゴ高原とのこと)。国境を境にオーストリア軍と対峙していたイタリア軍小隊を描いた、まじめで静かな反戦映画。季節は冬、深い雪に埋もれかかった塹壕と掘っ建て小屋が小隊の基地。

色:彩度を極端に落とした、モノクロと見間違えるような色調の映像が印象的。雪、兵士の歯、傷の手当て用のガーゼなど白色がくっきりと浮かび上がる。

音:国境に張り巡らされた鉄条網には牛の首用らしき鈴がたくさん付けられている。この地方は平時は牧草地なのだろう。静けさの中で鈴の音がチリンと鳴っている。そんな中、オーストリア軍の大砲の爆音が響く。

自然:モミの木の森林の中で落葉したカラマツの木が凛と佇む。ウサギ、キツネ、ネズミなどが淡々と生きている。戦に四苦八苦している人間との対比で、人間のしていることの虚しさが伝わる。

虚しい任務:戦だけでなく、食糧調達の者が通れるよう雪かきをして道を作るのも兵士の任務。インフルエンザにかかり高熱で起き上がれずにいた大尉(隊長)の所へ師団司令部の命令を伝えに大佐(C・サンタマリア)一行がやって来る。塹壕からほど近い廃墟に無線(?)を取り付けるようにという命令だが、廃墟が距離は近いが高所にあるのを司令部は見落としている。上層部はマヌケが多いのはいつの時代も同じ。

兵士たちの楽しみ:家族から届く手紙。物語の前半、郵便が届いた19人の兵士の名前が呼ばれる。後半、オーストリア軍の攻撃があり、その直後の郵便が届くシーンでは17人の名前が呼ばれるが誰も返事をせず。一人の兵士の頬を流れる涙がクローズアップ。17人の名前が呼ばれるだけで何のセリフもないが、17人が無駄に戦死したんだと気付かされる。

疑問:死ぬ前の告白を聞いてあげている人がいるのだが、最期の告白を聞くために神父が従軍しているのだろうか?

タイトル:セリフでも言っているが、戦争が終わって故郷へ戻っても、死と隣り合わせだった恐怖は兵士の心に残る。一方、緑はよみがえるだろう。つまり、ここで兵士が命を落としたことなど忘れ去られるだろう。タイトルを見たとき「緑はよみがえる」とは、“平和が戻るだろう”という意味かと思ったが、間違いだった。

(覚え書き)
献辞:al mio papà che quando ero bambino, mi raccontava della guerra dove’era stato soldato (私が幼い頃、従軍した戦争の話を何度もしてくれたパパへ捧げる)

最後のテロップ:La guerra è una brutta bestia che gira il mondo e non si ferma mai
Toni Lunardi, pastore(戦争とは、世界中を駆け巡り、絶対に足を止めることのないけだものだ 羊飼いトニ・ルナルディ)

エンドロールの頭の文:Qussto film ha preso ispirazione dal racconto La paura di Federico De Roberto -1921(この映画はフェデリコ・デ・ロベルトの短編「恐怖」(1921年)から着想を得た)
birichina

birichina