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これが私の人生設計のochoのネタバレレビュー・内容・結末

これが私の人生設計(2014年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

男尊女卑なイタリア建築界において、主人公セレーナが奮闘するおはなし。

子供の頃から天才で、建築学において数々の大学を卒業し、キャリアもしっかり!でもイタリアが恋しくなって帰るというところからスタート。
前半ちょっとやりすぎな経歴(そんなに大学たくさん出てどうするのw)でついていけるか不安になりましたが、徐々に落ち着いてきて、現実味のある大変そうな感じに。
ローマに戻ってからは、男尊女卑がはびこる建築界の現実を突きつけられ、ろくな仕事に就けず、貯金も一年でそこをつきます。
やむなく始めたバイト先の店長、フランチェスコがセクシーイケメンでドキドキする日々。

そんな中、父の形見である古いバイクを盗まれ、呆然としているところ、目の前に現れた巨大建築、コルヴィアーレ。
とても有名な公営住宅で、1キロにも及ぶ長さから、"セルペントーネ=大蛇"と呼ばれているそう。
ブルータルでとってもかっこいい空間に心奪われつつも、荒廃しており、EVもなく住民は住みにくそうなことに気づきます…それもそのはず、運営会社が初期に倒産し、元々入るとされていた商店、病院など何も入らなくなってしまったのです。しかし、改修案の公募が出ていることを知り、彼女は奮起。

超絶優秀な彼女はバイト先でも
フランス語、日本語などを駆使し接客し、それに気づいた店長に経歴を聞かれ、そこからだんだんと親しくなります。しかし彼はゲイ。友達として接することのできるセレーナに優しくしていたようで、彼女を家に迎え入れ、仕事がうまくいくよう応援してくれます。最高の友達かつサポーター!
ただ、毎日男同士の営みの声を聞かされるので、それにはセレーナもうんざり。永遠に何かをミキサーにかけて誤魔化してますが限界があって面白い。ぜひノイキャンイヤホンを手に入れてほしいです。

さて仕事の方はというと、必死でまとめた資料をプレゼンに行くも、男性の建築家はどこですか?と聞かれ、苦肉の策として、ブルーノ・セレーナという男性建築家が提案しているが本人は日本にいて、自分は助手だと説明し切り抜けます。くーー!悔しい!!許せませんよね〜、でも遠からずなことは日本でもあります。
しっかりした提案だったために、選定されますが、困り果てたセレーナ。
フランチェスコを上司に仕立てあげ、契約までなんとか騙し騙し進めるという策を思い付きます。
途中彼氏のニコラや故郷のおばちゃんたちが乱入するのもイタリアンコメディらしいドタバタ感で楽しい。セレーナの方言強すぎる叔母さんは、あき竹城っぽさがあって、見どころ。

とてもリアリティのある描きぶりは、実際にコルヴィアーレの改修コンペで2009年に女性建築家グエンダリーナ・サリメイが選ばれたものの、進まなかった経緯から。これはシンプルに経済的な理由のようでしたが、緑の空間の提案は彼女の案をベースにしています。
調べたところ一応完成していて、2021年のアーキデイリーに記事があったので、載せておきます。

https://www.archdaily.com/960563/chilometro-verde-five-women-architects-revitalizing-the-corviale-a-giant-public-housing-project-in-rome


男尊女卑の話、LGBTQの話、経済格差の話、そんな説教くさくなりそうなところをサラッとドタバタ劇に落とし込んでいるのはとても上手でした。

"みんな仕事のために嘘をついている"
"幸せな家庭は似ている、不幸な家庭は様々だ"など、胸を打つ一節があり、特に、、セレーナがいう"私が女じゃなかったら理想のカップルよ"という言葉、この映画に通底する"男だったらよかったのに"が現れていて、なんとも言えない気持ちになります。

大逆転劇ではないですが、無能でプライドの高い社長の周りの人がセレーナの一件で変わったこと、その人たちと仲良くアブルッツォに集まっているのはとてもよかった。
ここから始めないとねというメッセージのようでした

イタリアは、女性は女性らしく、男性は男性らしくが強いように思いますが、ちゃんと女性がバチバチに強いので、まだ救いようがある気がします。
ファシストと言われていても、一応"女性"のメローニ首相もいるし…後進してる日本は100年経っても女性の首相が出る気がしないです…
実際、イタリアのジェンダーギャップ指数79位、日本は125位とこの状況を描かれているイタリアにも大差をつけられています…
少しずつ変わっていってほしいですね

また、これはいつもの邦題残念あるあるなんですが、scusate se esisto! すみません私ここにいるんですけど‼︎という感じの原題の方が絶対にしっくりきます。
原題から変更してうまいなと思ったのを見たことないので、そのまま訳せばいいと思うんですよね〜

余談ですが、ゲイ彼ニコラ役のマルコ・ボッチは、たまたま先日見ていた別の映画(昼下がり、ローマの恋の若者ストーリー)に出ていた
ラウラ・キアッティの旦那らしいです。
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