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カンバセーションズのNMのレビュー・感想・評価

カンバセーションズ(2005年製作の映画)
4.3
どうしたらこんな作品が作れるのか。本当に素晴らしい。もっと早く観たかったが観ることができて良かった。

まさに会話劇で、いい雰囲気の男女が延々やり取りを続ける。こんなことは大人でないとできないこと。二人が若い時にはこんな会話はなかっただろう。
主役二人は大人で、或いは既婚でなくてはならない。
画面が二つに分かれることが多いが、もちろんただ分割しているわけではなく、様々に変化を持たせた演出が奏功していてどきりとする撮り方。

浮気はよくないが、ここまで押し問答を見せられると、いやもういいじゃないの、お互い納得してるんだし、と言ってしまいたくなる。
ところが、やっぱり後味は悪い。現実的。

朝ショックを受けた男の表情が良い。死人でも見たような。その後すっかり取り乱す様子も見苦しくて良い。
女の方は全て覚悟して寝たので比較的冷静。
こうなってみるともう回想シーンの青年はとても浅薄にしか見えない。彼女の方がはじめから随分大人びている。
二人は同い年だが、離れてからの間、女は困難を乗り越え成長し、男は変わらずにいた。もうこの距離を埋められない。
好きだけど頼れない男を見限り子どものため幸せな家庭を築いた女、若い女と結婚し飽き飽きしている男。
始めに彼女が感じた、私の方が年増であなたが少年のような気がする、というのは的を射ていた。

何となくフランス映画風にも思えた。似たようなものを作ろうとして大失敗している作品もいくつか思い出した。カノーザ監督の才能に脱帽。一体彼は何者なのか。
厳格な家庭で、子ども時代は映画やテレビ類を一切禁じられて育ち、アジア各地を転々とし日本にも住んだことがあるという。だから誰にも似ていないオリジナリティがあるのだろうか。ハーバード在学中に作った作品も好評、本作が長編では第二作目だという。
本当に台詞だけの面白さなら本で読めばいいが、映画で観る必要性があるだけの映像に仕上がっている。

ヘレナ・ボナムカーターは個性的な役が多い印象だったが、こんな比較的普通の女性の役は珍しい。変な役しかできないわけではなく、何でもこなせる女優だと知った。
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