ぐっさん

ラ・ラ・ランドのぐっさんのレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
3.9
とにかく今年に入ってから何度予告を見たんだろうと思うくらいに刷り込まれたLA・LA・LAND。
監督の前作「セッション」は嫌いじゃないながらも、そこまで乗れなかったこともあり、多少不安も感じながら鑑賞…後味が「セッション」観たときにちょっと近かった。

シネスコの広がりのある画面、こだわり抜いたであろう色彩、美術の数々、エマストーンとライアンゴズリングの演技、そして素晴らしい楽曲!特に冒頭2曲目かな?に歌われる「someone in the crowd」は映画史に残る名曲だと思う。ブレイク後の展開、メロディ、エモーショナルなコード進行、全てが最高。
曲の力とエマストーンの可愛さ、ライアンゴズリングの切なさだけで充分素晴らしい映画ではあるんだけど。

ミアは自らの力で欲しかったものを手に入れて、セブは華やかな世界から身を引いて…というラスト、いや、セブも充分幸せだろうよ!
ジャズの世界では決して恵まれなかったかもしれないけれど、演奏スキルやセンス、音楽の才能を持っていて、それを認めてくれる奴がいる。キース(ジョンレジェンド)だってそれを分かっててあのバンドをやっていたし、セブを誘った。そして充分(セールス、マスの意味では)成功したから、セブは結局自分の夢だった店を開けたわけで…もちろんそこにいて欲しかったミアはいないし、場所も違うのかもしれないんだけど。でもお店は満員、自分の好きなジャズを好きなだけ演奏出来て、それに対価も支払われる。ジャズを救うことは出来なかったかもしれないけど、そこでは確かにジャズが鳴っているわけだから…ビターエンド的にするのはちょっと違うんじゃないか、との思いは拭えず…。
ハリウッドセレブ夫妻が「ちょっと入ってみようか」と思えるような店を開けたんだからそれはハッピーだよな…。

音楽との付き合い方、表現との付き合い方はそれぞれあって、何かを犠牲にしたり代償を支払うことで得られる表現や説得力があることはもちろん承知の上で、でも僕はセブに、「お前だって幸せだよ!」と声をかけてやりたい。
音楽が流れている、その瞬間だけはifもしもの世界を2人の間だけに見せてあげることが出来るってすごく素敵なことなんじゃないか。だからこそ我に帰った時には切ないのかもしれないけど…。
やっぱり男はどこまでも女々しいのかな…。「セッション」に引き続き、音楽や、その成功の仕方、表現論や捉え方の部分に関してなんか物申したくなってしまう映画ではあった。
たとえば「シングストリート」は、持たざる者達が必死にカッコつけて、でも音楽をプレイする楽しさが多幸感をもたらした。でもそれは青春だったからなんだな、と。
この映画のセブもミアも、青春という時期は過ぎ去ってしまって、それでも夢を信じたり追い続けたり、叶えたり敗れたりする。ジャズドラマーを志半ばにして諦めたという監督の経歴を考えると、セッションに引き続いてこの物語に深く自己投影してるんだろうなというのは強く感じる。
でも、どんな環境でも、自分の好きなものを続けられる人は強いし幸せなんだよ、と、結果セブに感情移入しまくってしまったのでした。


エンドロールに流れるエマストーンのハミングがすごく美しい(それはまるでハリウッド女優生活を送る中でふと口ずさんでしまったかのよう)ので、エンドロール流れた瞬間ゾロゾロ帰って行く約半数ほどの人々に驚愕…ミュージカル映画なのに!w
冒頭群舞シーンが終わってからゆっくり入ってきた人がいたのにもびっくり…!
ぐっさん

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