映画を見る猫

ラ・ラ・ランドの映画を見る猫のレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
4.0
ミュージカルは、大胆に。
その宣言をもって始まる圧倒的なファーストショット。
低予算映画で成功した前作『セッション』では、撮ることのできなかった画を撮ろうとする監督の鼻息が聞こえてきそうな野心的な冒頭シーンはぜひスクリーンにて。
鮮やかなミュージカル。
音楽と映像の両方をもって、誘うは夢の世界。
何度も重ね合わせるように思い出した『シェルブールの雨傘』は、この映画の最後にヒロインが来ているドレスの色で、やはり模範的作品であったのだろうと推察する。
しかしジャック・ドゥミが戦争によって引き裂かれた男女を描いたのと違い、ここでは〝夢〟がその分岐点を成す。
人生で何を選択するか、そこに正解はないだろう。
だが、その選択が何であれ、何よりもまず〝選択できる〟ということそのものに、大きな意味があるのではないだろうか。
「すべての女性が望むものはなにか?」
その昔、アーサー王の物語で説かれたこの問いの答えは「自らの意思を持つこと」であった。
戦争に奪われた恋人を、女は待つことしかできなかった時代を超えて。
この映画のヒロインは、自信たっぷりに言い放つ。二人の恋の始まりは「私が決めるの」と。
その宣言は、高らかで、強い。
そして、その強さを許す、時代の変容を映画という文化の中に辿ることにまた一つ楽しみを見出すことができた良作であった。