現れる小林

イット・フォローズの現れる小林のレビュー・感想・評価

イット・フォローズ(2014年製作の映画)
4.4
奇抜な設定だが、それをかなりのリアリティーをもって映像化できている。盛り上げ方や撮り方も良い。

設定も主人公たちを追い詰めるために上手く練られており、たまにホラー映画を見ている時に頭に浮かぶ「全く関係ない人に呪いを移しちゃえば済む話じゃん」みたいな逃げ道がうまく塞がれ、観る上でのノイズが起きないようになっている。

ホラー映画の中でも最高傑作、というように評する人もいるが、多分それは並のホラー映画に飽きたマニアにとって設定が斬新で面白い、という意味であって、最恐という意味合いではないと思う。

怖いかと言われると自分にとっては微妙だった。序盤から中盤の、長身の人が後ろの廊下の暗闇から出てくるところと、向かいの家に男がスタスタ近づいていって人間離れした動きで窓から入っていくところとかは怖いが、終盤、人間側も怪異側も大胆な動きをするようになってからは割と恐怖から覚めてしまったというか、むしろコミカルに見えるシーンすらあった。

何より、"それ"が椅子や電化製品などの物を振り回したり投げたりするのが、怪異の得体の知れなさとミスマッチな気がした。透明人間を映像化するとなんか滑稽というか、ドラえもんみたいな世界観になりやすいのと似ている。
ポルターガイスト的要素を登場させる際は、物が勝手に落ちたりドアがゆっくりと閉まったりするぐらいが一番怖い。物が浮かび上がったと思ったらこっちに飛んできた、みたいなことが起きると、明らかに"人間の手"だな、という気がしてしまって興醒めしたりする。

ただ間違いなく今までに見たことないアイデアが詰め込まれた作品であり、丁寧に薄気味悪さを追求したんだろうなというのが伝わってくる良作なので見る価値はあると思う。