MikiMickle

イット・フォローズのMikiMickleのレビュー・感想・評価

イット・フォローズ(2014年製作の映画)
4.3
大学生のジェイは、新しい彼氏のヒューと映画館デートを楽しんでいた。しかし、彼は何もない所を指さし、人がいると言い、映画館を急いで出る…
後日、二人は結ばれるのだが、いきなりクロロホルムを嗅がされ、下着姿のまま車イスに縛りつけられるジェイ。
ヒューは語る。
「さっき、あるものを君に移した。これから、あるものが着いてくる。“それ”は、様々な人、時に知人や愛する人に姿を変えて君についてくる。殺される前に誰かと寝て、それを移せ。君が殺されたら、“それ”はまた俺に戻ってくる。今から起こる事をきちんと見ろ」と。
その直後、廃墟の奥から、裸の女がゆっくりゆっくり歩いてくるのだ…

日常生活に戻ったジェイ。
ヒューは姿を消していた。
その日から、ジェイは“それ”を目撃するようになる。
“それ”は他の人には見えない。
“それ”は、逃げても逃げてもついてくる。
ジェイと友人の、“それ”に悩まされる苦悩の日々が始まる…


まず、“それ”の七変化が面白い‼
面白いというか気持ち悪い。
日常の風景に現れる微妙な異質感の不気味さ、見た目のインパクト。
老婆だったり、裸のおじさんだったり。個人的に好きなのは、後ろ手に縛られてボロボロになった娼婦みたいな“それ”。気持ち悪かったぁ…
“それ”がゆっくり、ゆっくり、歩いてくる…
「ジェイ、うしろうしろ~‼」的な恐怖もありつつ、
やはり、どこから現れるのかわからない恐怖が怖く、日常が映し出されていてもあの人は“それ”なのかなと気を張って見てしまう。
派手でわざとらしい演出もなく、頻繁にドタバタするわけではないのに、その神出鬼没感のために緊張感が途切れない。
そして、次はどんな姿になるのか、楽しみで待ってしまう♪

それを増長させるのが音楽の良さ‼
ジョン・カーペンターのような不協和音的シンセ音の緊張。レフン監督のようでもあり、盛り上がりと雰囲気がある。

それに相いまる映像の美しさ。
秋の自然、プールの水面、花を触る手…
荒廃した郊外の町並みや空き家は退廃的であり、不穏さと不安感とデカダンスを感じる。
ワイドレンズでの構図も美しい。

特に何度も出てくるプールのシーンは、性の象徴でもあり、孤独を表しているようだった

この映画は、“それ”に追われる恐怖とともに、青春恋愛ストーリーも軸にある。
幼馴染みや隣人との恋もあるんだけど、いかんせん、セックスしたら感染するから、責任やらも関わってきたり。
ティーンエイジャー故の、切ない葛藤、性への好奇心、性と自我の目覚め、ちょっとお利口でない感じもあったり。その幼馴染み感もなんか羨ましかったり。

性とホラーといえば、13金などのスラッシャームービーで、やらしい事をしたら死が待つ死亡フラグを思い起こすが、これはホラー黄金期のそういった都市伝説的ホラーをベースに、お気楽ポップコーンムービーとは一線をかくしたような独特の雰囲気がある。
何者かが姿を変えて襲ってくる事なんかは、『遊星からの物体X』などのSFの設定にも似通っているが、それとも違う。

また、レトロな雰囲気も良かった。
古いブラウン管テレビで流れる白黒の映画、昔ながらの映画館、ジェイの部屋のインテリアやレトロワンピース、電話、80年代の車。素敵♪
にも関わらず、貝殻のコンパクト型の電子書籍リーダー(これ、欲しい)が出てきたりと、過去と現代が交差するような不思議な感覚をおぼえる。
ジェイ扮するマイカ・モンロー(『ザ・ゲスト』)、可愛かった♪妹や友人らも皆良かった。

冒頭、そこそこの衝撃シーンはあるものの(これ、良いのです‼)、その後はグロさ無し。

突っ込み所は多々ありつつも、
じわりじわりと感じる恐怖と、“それ”の面白さ、セックスしたら移るという設定、乾いた青春ロードムービー的な雰囲気、映像美など、見所pointたくさんです♪

ラスト、心にひっかかるような、かつ、なんとも言いがたい余韻が残ります。

ドストエフスキーの「白痴」が出てきます。これがとても印象的。
無垢の愛、嫉妬、不安定な心情なんかをを書いた小説だけど、それも関連づけて考えてしまう。
そして、真の恐怖とは、死が迫っている事を知る事なのだ
MikiMickle

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