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グレース 呪われた純潔のkuuのレビュー・感想・評価

グレース 呪われた純潔(2014年製作の映画)
3.3
『グレース 呪われた純潔』
原題Grace.
製作年2014年。上映時間87分。

サクッと戦慄!時間短めで楽しめるポゼッションホラー作品。
(ポゼッション (Possession)てのは、『所有』や『占有』を意味する英語。
そこから転じて、『悪魔が取り憑く』を意味する)
主役グレース役にはアレクシア・ファスト(トム・クルーズ主演の映画『アウトロー(2012年)』にサンディ役で出てたときも可愛いし目を惹いた)
脇をかためるのは、アラン・デイル、リン・シェイ、ジョエル・デヴィッド・ムーア他。

母の死と引き換えに、この世に生を受けた娘グレイス(アレクシア)。
貞操を守りながら美しく成長した彼女は、大学へと進学するが、乱れたキャンパスライフに身を置くうちに、性欲や殺意に満ちたおぞましい悪夢に翻弄され始める。
ほどなく祖母ヘレン(リンはホラー似合うなぁ)のいる実家へと戻ったグレイスだったが、彼女の中に潜む邪悪な霊がさらに牙を剥き、聖職者たちをも苦しめる。

今世紀にポゼッション映画を製作する際の問題点は、それが既に徹底的にやり尽くされていることかな。 
1973年に公開された『エクソシスト』は、その基本をほぼ網羅してるし、それ以降も、枚挙に暇がないほどある。いくつかの面白い模倣版があったが、最近では、ポゼッション映画を目立たせるんのには努力しなあかんやろなぁ。
今作品のストーリーは、やや地味やけど、グレースの魅力は何やれ。
グレイスの視点、つまり悪魔の目線から撮影されているという事実が、今作品のオリジナリティを高めている(ネタバレではない、映画のタイトルにもなっているし)。
これって、映画『マニアック』のリメイク版で成功した装置で、スラッシャー映画で成功したんなら、ポゼッション映画でも成功するんちゃう的なノリやったかどうだかはわからんけど。
今風なら
しらんけど。かな。
今作品の予算的な制約があるからやろけど、『マニアック』のときよりも芸術性がかなり低下しているように感じられるけど、全体的にはうまくいっているかな。
紙一重のストーリーは、他の映画からの明らかな借用や、いくつかの安っぽい効果は別として。
俳優陣においては、リン・シェイの存在はどんな映画でもビビらすテクは素晴らしいが、ここでは彼女が威厳のあるバアちゃんを巧く演じてたし、彼女がグレースを懲らしめるシーンは、効果部門のどんなものよりも怖いものである(バアちゃんゴメンよーって云いそうになった)。
狂信的な老婆ほど怖いものはない。
また、アラン・デイルがストイックなジョン神父を演じ、彼のキャラの運命はかなり予測できるものの、強気な権威の存在感を加えてたし、少し物足りなさを感じるが、それでもこの俳優によって巧く表現されてたかな。
実際、この映画には悪い演技はなかった。
すべてのキャラが最大限に生かされているかって問われたら肯定は出来ひんまでも、キャストは与えられた役割をうまくこなしているんちゃうかな。
今作品は、ホラーの限られたサブジャンルで何か違うことをしようとする製作者の勇敢な試みでやと思うし、こないな方法を試みた作品は記憶にないし、大部分はうまくいっていると云えるかな。
また、前半は現代のティーンエイジャー向けホラー映画の常として、ジャンプ・スケアーに次ぐジャンプ・スケアーの連続やけど、グレースが家に戻り、本当に奇妙なことが起こり始めると、映画は上がり、いいエネルギーを持ってた、エスカレーションに頼った流れがあった。
ホラーに興味がある人なら、この作品をただのギミックとしか思わないかもしれへんけど、今作品は、少なくともある部分では、その背後にあるちょっとした努力の積み重ねがあり、製造ラインのスーパーナチュラル(超自然現象)ホラー映画の多い今日においては、製作者が望むほどではないかもしれないが、この作品を際立たせるのに十分なものであったと思います。
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