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ルンタのwigglingのレビュー・感想・評価

ルンタ(2015年製作の映画)
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中国の侵略を受け、その心優しい国民性故に抑圧に屈した形になってしまったチベット。しかし彼らは屈服したのではなく、焼身抗議という形で抵抗を続けていた。その数140名以上。チベット人の「非暴力の戦い」とは何なのか?に迫ったドキュメンタリー。

チベット人を支援する日本人・中原氏の案内で物語は進行する。インドに逃げてきた僧侶や激しい拷問を生き抜いた人々、焼身抗議をした者の近親者たちから様々な証言を聞く。
そこからわかるのは、チベット人は例外なく愛と慈悲と利他の心を持った敬虔な仏教徒なのだと。自分に起きた事はカルマによるものである、復讐は暴力であるので選択肢とはなり得ない等々。ほんと全員がダライ・ラマみたいなんだよね。

いちばん衝撃的だったのは「自由は命より大切なもの」という言葉。自らの身を焼き自由の奪還を訴える理由がそれで分かった。なかには女子中学生の焼身者もいたりするわけで、これがチベット人の神髄なのかと。
たとえどんな目に遭おうとも命さえあればなんとかなる、なんとしても命だけは守れ、という西洋的な考え方が身についている自分には、にわかには同意できそうにない。同じモンゴロイドでも生きる環境が変わればこんなにも違ってしまうのか。

中国が民族絶滅を狙っているのはチベットだけではなく、ウイグル、モンゴル、台湾などもそう。嫌中的な考え方には全く同意できない自分だが、この問題に関しては中国を徹底糾弾したい。これをテロリズムと言わずしてなんと言うか。

ちなみに「ルンタ」とは、チベット語で「風の馬」の意。風の馬は民の願いをを神に届ける。チベット人は祈りを捧げる時にルンタが描かれた紙切れを空に投げる。
日本からも彼らの願いが叶うよう祈りたい。
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