三四郎

思えば遠くへ来たもんだの三四郎のレビュー・感想・評価

思えば遠くへ来たもんだ(1980年製作の映画)
3.5
青春学園物語。青田先生が最後の方で「青い山脈」を口ずさんでいるのがまた良い。
映画の歴史はつながっていると感じさせてくれる。ただ「青い山脈」は東宝…。

高橋のお姉さん百合子は、バスに乗る前に青田から呼び止められ、嬉しげに振り返る。「行かないでください」と、一言でいいから言ってほしかったんだろうなぁ…。青田は百合子のことを想いすぎて、彼女の幸せを願い愛しているからこそ、最後の一言が言えなかった、切ない。
しかし、不登校の生徒の姉に一目惚れし、生徒の家へ通い生徒に説得を続け学校へ来させ、お姉さんとも仲良くなる、こういう筋は学園ものではよくありそうな話だが、展開の早さに驚いた。悪ガキどももすぐ青田先生になついている。叱るとこは本気で叱り、ふざけるとこは存分にふざける、こういった厳しさ、優しさ、面白さのある先生には生徒たちもついてくるのだと、映画の中で描かれているような気がした。
竹刀でケツバットをしたり、頭グリグリをしたり、今では体罰だなんだかんだと言われそうだ。しかし、先生と生徒に信頼関係が構築されていれば、体罰ではなく愛情、教育と見ることができるのではなかろうか。

清水先生が病(失恋の?)で寝込んでいる青田先生を訪ねてくる。「オレンジ買ってきたんだけど食べる?」と聞きながら、もう剥いており、しかもオレンジというかグレープフルーツに見える笑 九州人はやはりザボンが好きなのかなぁ。
最も感心したシーンは、青田の下宿先の生徒茂が、勝手に青田先生から清水先生への恋文の代筆をし、清水先生から結果的に振られる、その後の場面だ。青田先生は怒らず、文章の文句から茂だとわかり、茂の部屋の襖を開け、顔は見せずに「情けない俺を見かねて、ラブレターの代筆かぁ…(略)お前のように上手くはないが、恋文ぐらいは自分で書けるぞ、うん…。でも、まぁ、お前の行為には…感謝する」と言う。ここで怒らないのが「教師」なのだと感じた。生徒のしたお節介を受けとめている。腹立たしいはずなのに、また告白する前に振られて、一番辛くて哀れで苦しいのは青田先生なのに…。このシーンがあるだけでもいい作品だったと言える。青田先生演じる武田鉄矢は教師役がよく似合う。

旧作なのでコマ飛びしているのか、キャメラマンの腕によるものなのか、あるいは編集が下手なのかわからないが、シーンのつなぎが雑なのが気になった。
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