カラン

ピートと秘密の友達のカランのレビュー・感想・評価

ピートと秘密の友達(2016年製作の映画)
3.5

冒険旅行に来た親子3人を乗せた車が森のなかで事故に遭う。車の前席にいた両親は即死のようで、少年が暗い森に1人取り残されると、そこにやってきたのは恐ろしい風貌のドラゴンだった。。。



6500万ドルの大予算で1億4000万ドルの興収となった。『ア・ゴースト・ストーリー』(2017)なんて予算10万ドルで、200万ドルの興収らしい。どっちが凄いのかよく分からないが、本作『ピートと秘密の友達』がこれまでのデヴィッド・ロウリー映画のなかで最も興収額の大きい作品となり、評論家の受けもよかったようで、同じDisneyからピーター・パン映画が製作されることにもなった。こちらはコロナ禍で残念ながら配信限定の公開となったようである。

本作は『アバター』(2009)や『猿の惑星』の新シリーズ等を手がけた、おそらくVFX製作の最大手の1つであるWETAデジタルが請け負っている。グリーンバックでCGを合成している。デジタル撮影で、デヴィッド・ロウリーらしく日光の煌めきが素晴らしい。この種の映画の対象年齢を考えてか、明るい画面である。ニュージーランドでロケを行った。


☆悲しいことに、夢がない

『グリーンナイト』(2021)まで含めて、どのデヴィッド・ロウリー映画よりも夢がない。3人の大人(冒頭の実母&ブライス・ダラス・ハワード&ロバート・レッドフォード)が唐突に少年に言う。「これまで見た中で最も勇気のある男の子だ」と。3回、同じことを言うのだが、どれもどうしてそんなことが言えるのか不明な文脈である。

そうやってこの映画は少年を「世界一」に仕立て上げながら、ドラゴンを飼いならされた、脆弱な存在にしてしまう。「世界一」の少年に「飛べ」と言われたら飛ぶかもしれない。ロバート・レッドフォードに「やめろ!」と言われたなら、火を吹くのを誰でもやめるだろう。ドラゴン以外は。人知を超えた存在のドラゴンが人間の言うことを聞くいわれなどない。橋を焼き尽くしたければ、焼くのだ、ドラゴンは。しかし、この映画のドラゴンは人間の都合を考えてくれる。

だからそんなドラゴンの庇護のもと、アヴァロンの野生児よりもずっと楽な環境で6年暮らしてきた少年がなぜか「世界一」だと煽り立てられて、返す刀で、ドラゴンはhalf-tamed、牙を抜かれてしまうのだ。少子高齢化社会の子供崇拝の返しで、竜を矮小化しているのである。だからこの映画はつまらないガキと老人だけの現代社会の縮図のように思えるのだ。

この映画には夢が感じられないという所以である。デヴィッド・ロウリーには『ア・ゴースト・ストーリー』や『グリーン・ナイト』の方向で攻めまくってほしい。子供におもねるのは、子供は気持ちいいのかもしれないが、周囲の大人にはつまらないのである。


レンタルDVD。画質は良い。音質はあまりかな?
カラン

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