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666号室のzhenli13のレビュー・感想・評価

666号室(1982年製作の映画)
3.6
この中でわかるのゴダール、ファスビンダー、ヘルツォーク、スピルバーグ、アントニオーニくらいで後はわからなかった。シャンタル・アケルマンも出ているように思うのだがクレジットに名前はない。

固定カメラとレコーダーだけが置かれた無人の部屋で「誰もいないのに一人で喋るのは変な感じ」などと言っている監督もいたが、カメラのレンズを通して観ている私はどうしてもそこにインタビュアーがいるような気分になる。インタビュアーの実体を失った独白。喋らずにそこから居なくなるなどというパフォーマンスをする監督は誰もいなくて、皆真面目に喋っている。

ゴダールは最も尺が長い。ゴダールが喋っているときにブラウン管に映ってるのはテニスの試合で(監督によって映される番組が変わる。名前がわからない監督で、おそらく日本の特撮ヒーローものではないかと思われる番組が流れていたのが気になる。ゴリラの怪人みたいなのが出ている)ゴダールらしいなと思う。滔々と喋るその内容は最も「映画とは」に言及しているように思う。途中になってる『映画史』の続きを観なくては…。
ゴダールは「私はカメラの前にいない。私の心と体はカメラの後ろにいる」と言ってたが、少し前のNHK第一放送「子ども科学電話相談」で藤田貢祟先生が「鏡が嘘をついてるのは左右ではなくて前後。正面を向いている自分を映したら、本来は鏡には後ろ向きの自分が見えるはず」というような回答(うろ覚え)をしていて驚いたことを思い出した。

スピルバーグは「映画撮るのは金がかかる」ことと「金にならない映画を撮らせないハリウッド」を簡潔に愚痴る。『E.T.』撮った直後らしい。
アントニオーニは未来予見的なことを真摯に述べている。しかし磁気テープすらも無くなり、いつ雲散霧消するかもわからない脆弱なデジタル記録メディアにとって変わられてしまった。『赤い砂漠』を思い出すなあと思ってたら本人が『赤い砂漠』に言及してた。

政治的な理由で国外に出られないユルマズ・ギュネイの声だけが出演する。プレイヤーを置いてヴェンダースは部屋を出る。テープの回るプレイヤーがアップになる。ついにインタビュイーの姿すら無くなる。声だけが実体となる。プレイヤーがギュネイ本人となる。
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