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弁護人のkuuのレビュー・感想・評価

弁護人(2013年製作の映画)
4.0
『弁護人』映倫区分G.
原題The Attorney.
製作年2013年。上映時間127分。

韓国の実力派俳優ソン・ガンホが主演し、イム・シワンが、不当逮捕されたジヌ役を好演してた韓国社会派ヒューマンドラマ。

青年弁護士時代の盧 武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が弁護を担当した重大冤罪事件
『釜林(プリム)事件』
をモチーフに、てか、細かい部分じゃ設定やエピソードにフィクションを交えてるけど、大筋は盧元大統領の実話かな。
ある事件をきっかけに人権派弁護士へと転身を遂げる男の奮闘を描く。。。

この映画に流れるテーマの一つに、国家ちゅう巨大な権力による
『理不尽』ほんで『不条理』や。
身に覚えのないことで拷問を受けた学生はもちろん、『法の精神』が通用しいひん法廷は弁護士にとって理不尽そのもの。

1980年代初頭、軍事政権下の韓国。
税務弁護士として多忙な毎日を送っていたノンポリのソン・ウソク←ヤン・ウソク監督とソン・ガンホの名前を足して2で割ってつけたみたいっす。
(ノンポリは、英語の『nonpoliticalーノンポリティカル』の略で、政治運動に関心が無いこと、あるいは関心が無い人。)
は、若い頃に世話になったクッパ店の息子ジヌが国家保安法違反容疑で逮捕されたことを知る。
拘置所へ面会に行ったウソクはジヌの信じられない姿に衝撃を受け、ジヌの弁護を引き受けることにするが。。。

1970年代後半から80年代前半、全斗煥(チョン・ドゥファン)率いる韓国の軍事独裁政権下を舞台に、国家安全保障の名の下に行われた悪事を詳述しとる本作品は、時代性を感じさせると同時に、過去の韓国に違和感通り越し怒りすら覚えるほどの作品かな。
ヤン監督と共同脚本家のユン・ヒョノは、学生運動家の逮捕と拷問を扱った実際の事件を参考にしながら、
理想主義と道徳的な怒りに駆られて極限状態に陥り、自分自身以上に誰をも驚くような、ありそうでなかったヒーローについて、親しみやすくも魅力的な物語を作り上げてる。
最初のうちは、主人公ソンと奥さんは、アパートからネズミを追い払うために猫のように半分遊びで、半分で真剣に鳴き真似してたほど、環境はささやかなものやった。
せや、豊かになっても、ソンは自分の謙虚な気持ちを忘れることが出来ないでいる。
ソンは、高学歴でデキる弁護士たちに軽蔑され、馬鹿にされていると感じている(彼らは彼のビジネスに割り込むことを誇りに思っていない)。
ほんで、反体制的な政府の政策に抗議するために学業を休んでいる大学生たちにも同情できないでいた。
しかし、恩人の息子(イム・シワン)が破壊活動家の一斉検挙で逮捕され、国家に対する罪を自白するよう拷問されたことで、ソンは心をバチッと締まり考え方を変えてく。
その辺りからバチバチ切れ者になってく。
ボロ鞘を抜いたら名刀やった感じかな。
ソンは弁護士活動に大きなリスクを抱えながらも、学生の弁護を引き受け、不正な法制度、腐敗したメディア・マスゴミ塵芥、国家安全保障法を利用してイカれた取調べを行う狂信者野郎たちに立ち向かっていく。
ソンは、この弁護士の進化をドラマチックに表現してるし、感情的に満足させることで、キャラ立ちして、観てる側に関心を持たせることに成功している。
ただ、取調べチームを監督するチャ警部(クァク・ドウォン)を、正義感あふれる弁護士の敵役としてもっとうまく描いた方がよかったかもしれない。
とは云え、チャは十分すぎるほどの行動力と威圧感を持ってて、警部が朝鮮戦争での父親の死について簡単に言及した際には、最小限の台詞で多くのことを伝えるって演技は巧いと感じた。
ゆったりとした前半の後、テンポは徐々に速くなり、小生の心臓と体温も上昇。
今作品は、私的ながら裁判前の準備や法廷での長時間のシーンでも興味を維持できたし、感情を揺さぶらさせてくれた。
脇役陣、特にソンの依頼人の心配性の母ちゃんを演じたキム・ヨンエは、全体的に母ちゃん然としてたし、全ての音を的確に表現していたとおもいます。
制作費のおかげか、時代の香りがさりげなく、しかし確実に維持されてんのも良かったかな。

余談ながら、
本作品のモデル重大冤罪事件『釜林(プリム)事件』で有罪判決を受けた学生たちのその後は、

1999年、この事件の被告人たちのうち11名が求めた再審の裁判じゃ、国家保安法違反容疑を除く戒厳法違反などの容疑についてだけ無罪が宣告された。

2012年、この事件の被告人たちのうち5名が、釜山地方裁判所に再審請求を提出。

2014年2月13日、釜山地方裁判所は、33年ぶりに釜林事件に対する再審を行い、5人の被告人に無罪判決を言い渡し、かつての法廷は被告人たちが告発に対して包み隠さず自供したものと考えていたが、調査の結果、被告人たちが警察に長期間拘禁される中で仕方なく罪を認めたことが明らかになり、またかつての法廷は被告人たちが国家保安法に違反したと判断したが、国家の安全や、自由と民主の秩序に対して危害をもたらしたことはなかったとした。
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