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最愛の子のtheocatsのレビュー・感想・評価

最愛の子(2014年製作の映画)
4.3
誘拐多発・一人っ子政策という中国の実情が深い味わいを醸す

序盤は様子見という感じで、誘拐事件が発生してからの経過も取り立てて此方に何らかの波を引き起こすということはなし。
しかし、子供が見つかってからのドラマが2重3重の転がしっぷりで、俄然耳目を惹かれることになる。

すなわち、誘拐犯人側の母親(誘拐犯の夫は既に死亡)にはメインの誘拐された夫婦(離婚はしているが)の息子の他に、もう一人誘拐してきたと疑われる別の娘があり、事件後施設に預けられたその幼女を誘拐犯側の母親が取り戻そうと訴訟を起こすという目を丸くする予想外の展開。
※誘拐犯側の母親が雇った弁護士にも認知症の母親という家庭問題がある。

とはいっても、あまり話を広げ過ぎてとっ散らかったまとまりのないぐずぐずの落ちになりそうな予感というか懐疑心は色濃かった。
しかし、そこからうまくシナリオを構築し、いかにもドラマ的ではあるが、四方八方丸く収まるエンドへと導いていく手際にある種爽快感を覚えた。

この映画の背景としてまず誘拐事件は実話だったということ。
その他誘拐事件も多発していること。
人口増加抑制のため一人っ子政策を中国が取っていたということ。(現在では確か緩和されたと記憶しているが)
※誘拐された子供を持つ夫婦でも、誘拐された子供の死亡証明書がなければ新しい子供の出産許可が下りないという理不尽な役所規定エピソードが映画に盛り込まれている。

そういった実情があったからこそ徐々に真実味が増してくると共に、ジワリ心情にも響く訴求力があったのだと思われる。

この作品だけではないが、中国映画には製作側の熱いパッションを感じる社会派映画が多いと感じている。
見て良かったと思う作品でした。002202
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