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最愛の子のsamsaaraneのレビュー・感想・評価

最愛の子(2014年製作の映画)
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誘拐犯と詐欺師を除けば、
登場人物誰も悪者じゃないから余計辛い。

お金も労力も時間もかけて一生懸命子供を探す実の親か、お金はないし環境もよくないけど実際に育ててくれた育ての親か。

ちょうど10年以上前の中国に数年住んでいたから、この映画の背景と同じ時期。今と同じくらいか今以上に都市部と地方の格差が大きかったと思う。

大都市の深圳で第二子を持つのであれば、罰金か第一子の死亡届が必要。
だから、グループセラピーのメンバーの前でリーダーが「妻が妊娠した」とお話をしたのは、誘拐された我が子の無事を信じて探し続けている他のご夫婦にとってかなりの衝撃だったはず。「我が子は死んだと認めた」前提があっての第二子だから、第一子への申し訳なさはもちろん、一緒に頑張ってきたみんなを裏切ってしまったと思うのも無理はない。

地方は働き手が必要だから配慮されているのか、ただ政府の管轄が及ばなかっただけなのか分からないけど、何人子供を持ってもよくて、逆に都市部は一人っ子政策の規制が厳しく、知り合いのご夫婦も二人目の妊娠が発覚したあと、罰金やら色々を懸念して堕胎を決意したという話を聞いたことがある。

中国には都市戸籍(城市户口)と農民戸籍(农业户口)というのがあって、身なりや持ち物、住んでいるエリアがあまり良くないのに兄弟がいると言う子がいたら、「この子は農民戸籍なんだな」「ご両親が出稼ぎに田舎から出てきたんだな」と思ったり、身なりがよくて習い事も沢山していて、ご両親が積極的に学校行事に参加したりするような家の子が兄弟がいると言っていたら、「この子の家は思った以上にお金持ちなんだな」と思ったりすることが自然だった。

エンディングで実話だと分かってひっくり返りそうになったけど、14億の人口を抱える国だから、表に出ていないだけで同じような話やもっともっと聞くに耐えない話もたくさんあると思う。

ただどの人にもそれぞれの事情や背景があるから、見えている部分だけを信じて動くのではなくて、その人がどうしてその言動をとるのか、なるべく人々の機微を見逃さないように、最大限の配慮を持って人と接したいと思った。
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