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戦場ぬ止みの667djpのレビュー・感想・評価

戦場ぬ止み(2015年製作の映画)
3.7
『標的の村』の鮮烈さには及ばないものの、沖縄が抱える(抱えさせられている)不合理をわかりやすく丁寧に描いている。
辺野古基地移設問題の入門編として素晴らしいが、ただそれ以上ではない、というのが感想(むしろそれだけでもとても大変で意義深いことなのだけれど)。

複数あった海上での、両サイドのやりとりのシーンに立場を超えた人間の関わりを見た、とは自分は思わなかった。
何故ならカメラは常に基地移設反対の側から向けられているから。
勿論、海保の側から撮影することが困難であることは重々承知しているけれど、『同じ沖縄県民、国家に分断されたけど想いは一緒』と観ることは、あのシーンでは到底出来ない。

基地移設反対を反対する漁師、国からお金をもらってしまったおばあ。
彼らの抱えるものの中にこそアメリカと日本、『国家の理屈』による被害が潜んでいるんじゃないか。彼らのディテールをもっと大切にすべきだったんじゃないか。

改めて『正しい(もしくは正しいと信じている)』人間を『正しく』撮ることにあまり意味がないと感じる。
たとえそこに正義があろうとも、それを正義だと思っていない反対者や、問題の外側で当事者ではないと思い込んでいる人たちに対して、その『正しさ』が伝わるとは思えない。
安易な『両論併記』を推しているのではなく、信仰コンプレックス甚だしいこの日本では、『己が正義を信じる人』を素直に受け取められない人間が相当数いる。誤解を恐れずに砕いて言うと、おばあもヒロジさんも反対する家庭に生まれた子供たちも、「ちょっと気持ち悪い」と思われてしまう可能性がとても高いと思うが故に、『どう描くか』を考えるべきなんじゃなかろうか。
作り手が本当に沖縄の不合理を訴え、変えたいと願うなら、より批評的に、より戦略的にアプローチする必要があると感じる。まあそれぞれのスタンスなんだけれども…。
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