コミヤ

戦場ぬ止みのコミヤのレビュー・感想・評価

戦場ぬ止み(2015年製作の映画)
4.5
辺野古基地建設に抗議する住民の中に90歳近い文子さんというおばあさんが出てくる。彼女は老体ながら、住民と警備隊がもみくちゃになる抗議活動の最前線に立つ。
「こんなので窒息しない、火炎放射器で焼かれてもまだ死なないで生きてるんだから」
「死なせてから通ってみろ、私はブレないからね、絶対通さない、人間の血が混じった水飲んで生きてきたんだから」
彼女がここまで反対するのは、実体験としての戦争による恐怖を抱えたまま生き続けているからだ。
「苦しいことしかなかった、生きたことを肯定できない、生きてる限り忘れられない」
そんな彼女だが時に下ネタを交えるなど笑顔を絶やさずに生きている。
「馬鹿なこと言わないと生きられないわけよ、いくつになっても涙が枯れないのはそういうこと」
このドキュメンタリーには、一貫して権力という強大すぎる敵を前に笑ってでもいないとやっていられないという住民たちの姿が映されているようだった。
毎週土曜の夕方、キャンプシュワブの柵に蝋燭を置いて基地建設への抗議をする家族の長女は
「笑顔でやってれば大丈夫、笑う門には福来るって言うからいつも笑ってる、笑って頑張ってる、怖いけど震えるほど」
と言う。
「警察にイライラする、沖縄県民守るはずの警察がなんで?ボーリング調査どうやって止められる?ボートとかに乗っても止められない、思いは絶対に変わらない、どうやって止めるんだろう?」

『ワンピース』でドラゴンが言った「とうとう子供にこれを言わせるのか…!ゴア王国!!」の台詞が現実化したようだった。

懸命な抗議の結果、基地建設に反対する翁長知事の当選という確かな希望が見出され、住民たちは歓喜に沸き、その晩は皆で踊り明かした。しかし当選の数日後、何事もなかったかのように工事は継続される。

「なんでこんなことするんだろう」
「お兄さんたち止めて」
住民がボートの上で引きつった笑顔で警備隊に語りかけるものの、巨大なクレーンがゆっくりとコンクリートを海に沈めていく。耐えられず笑顔が泣き顔に変わる。
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