犬たろ

たかが世界の終わりの犬たろのネタバレレビュー・内容・結末

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

物語の序盤から
涙が零れ落ちる

疎遠だった
次男との再会を
皆で祝っているような
慰め合っているような
家族のぎこちない戯れ

死期が迫っている
知ってか知らでか
見て見ぬ振りか

台所で家族一同
顔を揃えて
母の音頭で
過去を懐かしみ踊る
取り乱しているのか
見透かしているのか

冷たくあしらう
長男ですら
時折相好を崩す
不機嫌な振舞い
見え隠れする
家族思い

早々と察しがつく
兄嫁の勘の鋭さ
戸惑いの眼差し
嫁いだからこそ
見えてくる綻び
近寄りがたく
寄り添いやすく

一人の兄は無骨で
一人の兄は繊細で
まとまりを欠いた
兄弟の下で
一人もがく長女の
未成熟な愛着心が
一家の命綱

終盤の大喧嘩
長男の残酷な皮を纏った
家族の平穏無事を願う
優しさを帯びた怒号が
涙無くして見守れず

皆が慎ましく
健やかに暮らしを営む
それが何より
幸せに結びつく

誰かは云う

また逢う日まで
逢える時まで
別れのそのわけは
話したくない

近しい存在だからこそ
言い難い事柄がある

疎遠になったからこそ
灰汁が抜け落ちる

母の慰めが
憂いを晴らす

次はきっとうまくいく

p.s.

もしグザヴィエ・ドランが
折を見て“劇作家”になれば
瞬く間にその名を
演劇界に轟かせるのでは…
犬たろ

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