髙田由美

たかが世界の終わりの髙田由美のレビュー・感想・評価

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
3.7
気が塞ぐ
重い重い
息苦しい

家族といえどそれぞれが別の人間、相性や根本的な感性の違いは血の繋がりとは関係ない。かたや良かれと思うことが、かたや苦痛で仕方がない事だってある。
他人なら合わなければ関わらないでおけばいいだけなのに。“家族”というだけで、何も悪い事もしていないのに、単に“関わらない”という事に罪悪感を抱かされる。家族自身に、社会的通念に、自分の中に刷り込まれた先入観に。
それはもう、物凄い重圧だ。
アントワーヌのように訳分からんくらい絡んでキレてくれた方が、こっちとしてはスッキリ切ることができて気持ちがいい。

とにかくアップが多い。それも画面から顔がはみ出してるレベルのアップ。“顔”だけが情報の中で会話が続く。そこは実力派俳優達、表情のひとつひとつで語り、飽きずに観せてくれる。
アントワーヌは相当捻くれた嫌な奴なんだけど、演じているヴァンサン・カッセルが好き過ぎて、勝手に胸の内を深読みして擁護して観てしまい、それがラストに向けて良い方向に効いてくれた。

音楽の使い方、光の演出がグザヴィエ・ドランらしい、濃い作品。
髙田由美

髙田由美