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たかが世界の終わりのayrのレビュー・感想・評価

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
5.0
終始ずっと誰かの側にいた。そこから見える緊張も、怯えも、絶望も、感じとらざるおえなかった。まるで自分の過去の思い出みたいに、忘れないよう呪いをかけられた気分になる映画だった。

「理解できるわけがない」

母とルイ、2人だけの空間。香水をまいて「匂って」と近づく母の首に、顔を近づけたルイを抱きしめるシーン。セリフのないあの贅沢な間、諦めていても愛をもって歩み寄る母と、それでもぎこちなさが残るルイの表情、目線。

2人をかこむ空気を揺らすように、微かな低音が響いた。きっと映画館でしか感じられない微動。

服を撫でる音、吐息、目があう瞬間、名前を呼ぶ声、怒号の後の沈黙、微笑む顔、遠い過去の愛。すべて贅沢な間をつかって、うったえかけてくる。心で嗚咽が出るくらい泣いたのは、私がおかしかったんじゃない。

好きだけど、もう2度目はないかもしれない。
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