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たかが世界の終わりのmovieJackのレビュー・感想・評価

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
3.8
過去作「mammy」でグザヴィエ・ドランの若き才能に驚き
私的には追い掛けるべき監督の一人で
新作公開を心待にしていた

ストーリーは
病気により余命僅かである旨を家族(母・兄・妹・義姉)に告げるため
12年振りに実家に帰った次男のルイが
滞在した僅か5~6時間の物語

大半のシーンが顔面アップの会話劇で
会話からそれぞれの人間性と関係性を推測するタイプの構成で
これほどまでのアップにも耐えうる俳優陣の演技は自然で
派手さは無いものの
汗ばむ季節であることもあり
何かを内に秘めた互いのセリフと表情が息苦しく感じられた

今現在の関係性はセリフから少しは解るが過去の出来事について
父親との思い出
ゲイであるルイの彼氏との思い出の回想シーンが若干有るものの
何も語られないので推測するしかなく
何か過去の事件的な事も匂わされるが
全て観客に委ねられる
兄は血が繋がっていない?…ともとれるし
家を出た原因は兄とのトラブルとも考えられ…兄の拳の傷も何かを暗示しているのだろう

ルイが空港から実家へのタクシーから観る景色
久し振りに帰った土地の懐かしい風景
青空にピンクのフラミンゴのオブジェや行き交う人々
昔の記憶を思い出したり
何処かに知り合いを探したりするものだと思うが
元彼の姿を探していたのかも…
もう2度と来ることが出来ないと思うとルイにはどのように映るのだろうか…

当然ルイは最後の別れに来ている訳で
達観した表情で全てを受け入れどんなことにも微笑みを返すが

母と妹は楽しそうに今後の事を話し続け
兄は過去の出来事のためか
成功者であるルイへの嫉妬からか
または全てを察しているのか…
常にイライラしており普通の会話もできずに居る

家族が故に身内には悲劇的なことが起こらないという思い込みか
または現実を受け入れることができず
敢えてルイに言わせないよう
触れないようにしているのか
緊縛した痛々しいシーンの連続に居心地の悪さと緊張感がラストには極限に

唯一初対面の義姉のみが気が付いたような素振りであったが
彼女のセリフにも序盤から違和感が感じられた

ルイの中で家族との時間(時計)が停止したと思わせる小鳥が羽ばたく決別のシーンは
静かであるがルイの閉塞感と絶望を表していると感じられたが
まだまだ映画弱者な私には敷居の高い作品で
あと数回観ないと本質は掴めないかもしれない
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