くるぶし

たかが世界の終わりのくるぶしのレビュー・感想・評価

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
4.4
カンヌとは相性が良くないと常々思っていたけど、あっさり覆されてしまったなー。傑作です、ほんとに。美しき天才ともてはやされて、好きな監督はドランって言ってれば今おしゃれでしょ!みたいなアイコンにされてしまった感があって、そんなあなたをなめてました、すいやせん。

本作は家を出てある程度の成功をおさめている次男ルイが12年ぶりに実家へ帰ってくるところからはじまる。彼にはどうしても家族に伝えたいことがあった。けれど出迎えた母、妹、兄、兄嫁は、ルイを標的にして自分の思いを勝手に吐露し、羨望や嫉妬、孤独を無理矢理埋めようとする。

つくづく家族とは不思議なコミュニティなのだと思わされた。いわゆるDNAなど科学のはなしをしたいわけではないけれど、血縁とよばれる不可抗力が、じぶんの生き方までも縛りつける。そしてどんなに馬が合わなくても、顔を突き合わせなければならない巡り合わせを呼び寄せる。

誰も解くことのできない血縁という名の知恵の輪を、それぞれが力づくで外しにかかった先に見えてくるものはなにか。息が詰まりそうなほど緊迫したラスト10分の演技合戦は、ここ最近見た作品の中では出色だ。

戯曲が原作ということもあって物語が動き出すまでは少々退屈です。でもこのラストを見るまでの過程として我慢してくださいよ、損はしないと思うよ。
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