JTKの映画メモ

たかが世界の終わりのJTKの映画メモのレビュー・感想・評価

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
4.2
前作「mommy」のスケボーで疾走しながらスタンダードサイズのスクリーンをワイドに押し拡げるシーンの映画という表現形態でしか成し得ないカタルシスに身震いしたことも、更に私小説化したこの新作の前では小手先の幼稚な仕掛けに思えてしまうほどドランの演出は成熟してきっている。クローズアップ多用のシーンと相まって冒頭からエンディングまでその緊張感は半端なく息苦しく限りなくもどかしい。が。家族間のディスコミュニケーションというテーマこそ目新しくもなく「人と人とが解り合えるわけがない」というのが前提の自分としては、この作品で写し出されたものは謎でも不思議でもなくごく当たり前のこと。人と人とは愛さえあれば解り合い、語り合えば解り合い、手を繋げば解り合うような、そんな通俗的なアメリカ映画のような世界観とは対極にある天才ドランの真の意味での贅沢で豊潤な世界観に、もう拍手しかない。そして、ただでさえ解り合えない人同士なのに「コトバ」という不完全なコミュニケーションで解り合おうとする不毛。そういったことを感じた映画だった。