とか26

たかが世界の終わりのとか26のネタバレレビュー・内容・結末

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

❶2017/04/24



❺2020/05/08
❻2023/03/16

観返すたびに理解が深まって、
傑作度に磨きがかかり続ける作品。

俳優の顔を
画面全体に映すカットの連発によって
目線の動きひとつにしても
なんらかの意味を読み取ろうとしてしまうし、
あの家庭の
息苦しくなるような閉塞感まで表現していて
リスクある画面作りだけど
いろんなリターンも得てるなと思う。

ドライブのシーンで
兄貴の哲学の全貌が理解できるんだけど、
そんな境地に至ってしまうほどの扱いを
これまで受けてきたのかと思うと
あまりにも気の毒だし、
家族には 誰よりも兄貴のことを
愛してあげてほしいって思う。
だけどそうやって抱いた愛を
兄貴に向けたところで、
「俺を喜ばせられるとでも思ったか?!」つって
はねのける姿が容易に想像できるので
もう何もしてあげれないんだろうな…。
誰よりも他人のことを見てるし
他人が何を装ってるのか考えてるんだけど、
唯一 自分自身の態度を客観視できなかった故に
あんな嫌味っぽいキャラになってるんだろうから
他のキャラクターに比べても
兄貴の思考回路の完成度は桁違いだなと思った。
「上質な新聞紙でも読んでたんだろ?!」みたいな
他人に対しての想像力の高さには、
弟と同じ才能 持ってたんじゃないかと思う。

幸せな一日にしたい母親と、
何事も起きない日常を望む兄貴の間で
どこに自分の爆弾を落とすべきか悩む主人公
っていう構図のクライマックスに、
この展開の少なさで辿り着いてるの凄いんだけど
逆に、言葉にしていない点も多いことで
兄貴の行動の意味が全くわからない観客と、
主人公と兄貴だけが
正しい爆弾の落とし場所に気付いてることを
理解して観てる観客とで、
面白さに対する距離感が
はるかに違ってるだろうなとも感じる。

「とにかくここで爆弾を落とすな!」って兄貴と、
「爆発しない一日を送りましょうね」って
強烈な先手を打ってしまってる母親に
それでも真実を伝えるべきか悩む主人公…。
娘と母親の現実的な疑問のなかに
どんどん作劇的な兄貴の行動が侵食していく様は
フィクションとリアリティのあいだを
綱渡りしているようで表現力の極地だった。
こんなの感心するしかないです。

パッケージのヴァンサン・カッセル兄貴、
ボヤけてその存在感が明確になってないの
とてつもなく良い作り。

ありがとうございました❗️
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