NightCinema

500ページの夢の束のNightCinemaのネタバレレビュー・内容・結末

500ページの夢の束(2017年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

最後まで決してやっつけ仕事をしない映画で、愛を感じました。

それまでルーティンの枠の中で生きていたウェンディが、夢のためにそれを崩す決心をした。道路の「STOP」という停止線を越えて前進していく姿を映したカットはとても印象的でした。

訪れるピンチは数知れずでも、毎回思いもよらない斬新な方法でひとつずつ乗り越えていくウェンディ。書いた物語の内容は詳しくは分からなくても、そんな彼女の姿からその作品の面白さまでが想像できます。

渡ってはいけないと言われていた信号を思いきって進んだことで、初めて人の悪意と社会の厳しさに触れた。それでも泣いたりパニックになったりせず、自分の夢のためにただ進み続けるというのが良い。

この映画の素晴らしい所は、社会の厳しさや冷たさをありのままに描いていることだ。ウェンディに対する温情がないに等しい。

バスの運転手もチケット売り場の女性もウェンディのことを知らないから単に動作が遅い子だと苛々していたし、途中立ち寄ることになってしまった家でも弱みに付け入られてお金を取られた。生きるために必死な人間は多い。

強いて言えば、シナリオをばらまいてしまった所に運良くスコッティと息子が来てくれたことはとても奇跡に近かったけど…そんな幸運はありつつも、現実としてウェンディが対面する社会は、冷たく厳しいものだった。

だからウェンディが立ち上がっていく度に逞しさを感じたし、その強い思いに賛同してくれる人も現れ始める。

最初から割と親切で温かい社会なんていう生温い設定は、叶えたい強い思いを持っている人を前にすれば逆に失礼だし、またそんなものは必要もない。その人自身の思いや姿勢を見た周りが、自然とその人の後ろに列を作る。そういう種類の温かさを見ることができた。

街で会う見知らぬ人々の誰もが温かくサポートしてくれて無事に夢が叶ったよ、という設定に逃げていない所が魅力的に感じました。

主人公と、夢を持つ人達への愛情を感じる映画。
NightCinema

NightCinema