マインド亀

サクラメント 死の楽園のマインド亀のレビュー・感想・評価

サクラメント 死の楽園(2013年製作の映画)
3.5
タイ・ウェスト監督作、カルトが創った理想郷の混乱!そこからのサバイバル!

●昨年は『エックス X』、今年は『パール Pearl』でホラー界隈の寵児となったタイ・ウェスト監督のちょうど10年前の作品。ドキュメントタッチ・ホラーで、実際にあったカルト宗教の集団自殺をもとに、POV形式で撮影された映画です。
製作に回ったイーライ・ロスの好きな『食人族』観たいなモキュメンタリー物ですね。
けっこう面白かったですよ!ああ、カルト宗教の唱える人工的な楽園って、なんだか不気味なこんな感じなんだなって思いました。ある意味、『ミッドサマー』らしさがあるかもしれません。ただ、この楽園に住む人達はそこまでへんな儀式をやったり、やばいものを食べたり、乱交習慣があったり、映画的な見世場があるわけではないので、そのへんのリアリティラインによって、エグみやケレン味が無いので、そこまで怖くはないです。
よって、そのカルトの教祖の怖さとカリスマ性がいまいちピンと伝わらず、キャストのジョン・ジョーンズのオーラが無いんでしょうか、ポスターのコピー『「神」による絶対の恐怖』が感じられませんでした。(ちなみに、ジョン・ジョーンズは『ノー・カントリー』で、アントン・シガーとのコイントス勝負に勝って、知らぬ間に命を落とさずに住んだ、あのガソリンスタンドの店主です。)ただのオッサンにしか見えないのに、なんであんなに皆簡単に自決を受入れたのかヨクワカリマセン…

●POV形式の緩さもこの作品の特徴。このへんは意図的に映画としての見やすさとか面白さを優先してるんでしょうね。一応、今誰がカメラを持って撮影しているかはわかるようになってますが、1台のカメラであり得ないアングルを変えたカット割りをしてたり、とある登場人物がこんなに丁寧に撮影せんだろっていうような動画だったりします。あと、回収できなかったカメラが一台あるため、その回収シーンがなかったのが気になりますよね。そのシーンがないので、失ったカメラのファウンド・フッテージが差し込まれているのは、 事件後に回収されたのかな、などと要らぬ想像を膨らませないと補完出来ない内容になっています。(ひょっとしたらあのカメラ、燃やされてないでしょうか。)
その割に、カメラを置いて逃げ、元の場所に戻ってくるなどのPOVらしいシーンもちゃんと演出されているので、逆に出来ていない部分が、気になって仕方ありません。POVにするならやっぱりそのへんの整合性はとってほしいなあ、と思うのです。

●ストーリーとしては、主人公達が「理想郷」に来たために住人が動揺して混乱に陥っていく一晩を描いているのですが、正直、勝手に崩壊しているとしか思えません。「お前たちがここに『暴力』を持ち込んだ」とか言ってますが、正直主人公達が何かその理想郷に作用するようなことをしてるようには見えませんでした。しかも自ら撮影を許可してますしね(笑)
あと、ラストの方の話になるのですが、いまいち主人公達が逃がされた理由がヨクワカリマセン…
2023年に話題をかっさらっているチリのコマ撮りアニメーション『オオカミの家』の舞台となっているコロニア・ディグニダの圧倒的なマインドコントロールと史上最低の悪行のほうが怖い気がします…

●しかしながら、細かいことを気にしなければかなり楽しめる映画だと思います。色々と丁寧な作りですし、ちゃんとエグいシーンも面白く描いております。ここから9年後、あの名作『エックス X』が生まれるわけです。正直作風に共通項があるわけではないですが、イーライ・ロスに全信頼を置かれたタイ・ウェスト監督の丁寧な映画の作り方を観ることの出来る映画だと思いました。ミア・ゴスのような強力な「スペシャル」がいてこそ真価を発揮する監督なのかもしれませんね。是非見てください!
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