FukiIkeda

それでも僕は帰る シリア 若者たちが求め続けたふるさとのFukiIkedaのレビュー・感想・評価

4.4
プレス向け試写会にて89分版の鑑賞。
52分バージョンよりもキツいシーンはあったものの、やはり説明もシッカリされているので、入りやすく、わかりやすいとおもった。
敵も味方も同じ神を信じて同じ神に祈る。
「ヒゲを剃るまで生きてられるかな」と笑いながら言う主人公の青年バゼットはシリアのサッカーユース代表有名選手だった。
アサド政権に「今やめたらスター選手に戻してやるぞ」と言われても屈しずに自由の為、不当に殺された家族の為に戦うことを選んだ。
「この怠けたお前の姿を遺影にするよ」なんて笑いながら写真を撮った友達は政府軍に捕まり戻らぬ人となり、親友たちがどんどんと命をおとしていく。

戦争の犠牲になるのはいつでもどこでも子供達や若者ばかりだ。


以下52分バージョン 過去レビュー
試写会を主催して、52分のヴァージョンを2回観た。
1度目は配給元の友人に質問をしながら観たから理解しやすかったけど、CGではなくリアルな光景として、観たことのない世界が目の前に流れてくることで、正直、映像に目を奪われて、字幕を追うことができなかった。
2回目にやっと字幕を追えた感じ。それくらい衝撃的な光景だった。だって、映画のような本当に何もない世界が現実にそこにあって、普段着で市民が政府軍と戦っているのだもの。
国民を護るべき政府軍がテロリストとして、非暴力を訴えてきたサッカーの代表選手が率いるデモ隊をある日突然虐殺する。家族を殺された彼らは大好きなサッカーボールを武器に持ち替え、戦うことを選ぶわけです。
その中でも、非暴力を選び続ける親友。
シリアはかつて観光客の多い平和な街だった。それがある日突然、内戦で街が壊滅状態になっていくわけです。戦争はある日突然やってくる。
ただし、このドキュメンタリーはリアルだけど節度をもってあえてグロさを隠して真実を伝えようとしている作品でした。
重くて本当に辛くて苦しい映画だけれども、でも、今の日本だからこそ、より多くの人に見てもらいたい。
主人公の彼が、壊れた部屋の廊下に絶望的な様子で座り込んでいるところに埃まみれの光が差し込んでいるそのシーンは戦争の全てを表していて、苦悩そのものなのだけど、目を奪われるほど美しくも見えた。
今日これを観て感じたことを、1年後に「ああ、あの時、ああおもったのに、気づいていたのに止められなかった、、、」なんて思わない為にも。
最後のディスカッションでどなたかがおっしゃった「この映画には女性が出てこなかった。男はやっぱり銃や武器や飛行機、ヘリコプターが大好きだから、このドキュメンタリーで最初は非暴力だったのにやられたらやり返せ精神で武器をもった瞬間に武器に魅了されていってしまっていった光景に恐怖を感じた。男は戦争をどこかゲーム感覚で思っている節があるのかもしれない。でもそれを止めるのは女性の力で、子供を戦争に行かせたくない、愛する人を失いたくないという強い気持ちが彼らに歯止めをかける。それが女性の役目であり、これからは女性の時代だ」という言葉が印象的でした。
是非、より多くの日本人に観てもらいたい映画。
FukiIkeda

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