snowong0922

それでも僕は帰る シリア 若者たちが求め続けたふるさとのsnowong0922のレビュー・感想・評価

4.1
生々しかった。逃げているときの画面の揺れ、談笑する声の裏側に聞こえる銃声、人々の大歓声、バセットの弱音、全てが生々しかった。

バッセンが弱気になっていく様子が、戦争の泥沼化を物語る。シリアを取り戻すことを訴える彼らの戦いによって、むしろ、1人、また1人と、シリアから人々がいなくなっていく悲しい現実。シリアを彼らもまた破壊し、憎しみは深まり、人々の心の中の"ふるさとシリア"は遠ざかっていく。

泥沼化した戦いは、政府軍も反政府の若者たちも巻き込んで、それ自体が暴走する生き物のように成長していく。誰にもとめられないし、誰もやめられない。誰かがどちらにもやめろって言えば止まるのかもしれない。でも誰も言わない。大国は武器を黙って輸出し続ける。

他国がこの状態を知らないと思って、知ればきっと理不尽なこの戦いを止めるはずだと信じて疑わず、カメラで写真を撮り続けていた撮影者の友人の言葉を、私はただ見つめることしかできなかった
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