イスケ

猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)のイスケのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

今ひとつノヴァの存在意義が見えずにいたのだけど、まさか彼女との出会いのシーンに既に物語を大きく動かす伏線が埋め込まれているとは……

アルファ・オメガ部隊の大佐が、彼女のぬいぐるみによって猿インフルに感染する展開には震えました。
シーザーとしては、自らの手で復讐せずラクにしてやらないことが復讐だったのかな。あの時の彼の心情の複雑さは様々な捉え方ができます。

ノヴァはエイプを救う一端を担った一方で、猿インフル感染者であるから、このあと退化していく運命になるんだよなぁ。。
エイプの群れで暮らすことになるので、それが一番幸せな未来ではあるのだけど、寂しさも感じてしまう。
そう思うこと自体、自分にも人類としてのルーツが脳に刻み込まれているということなんだろう。


前作のドレイファス(ゲイリー・オールドマン)とは違って、大佐はいかにもな悪人ヅラ。
しかし、「自らの種を守りたい」という点で、大きな違いはなかったように思いましたね。

彼が猿インフル発症者を殺すのは、(それだけではないにせよ)のちの人類を守るためであって、現在の戦争でもよく議論される「大局のために一定の犠牲を許容するか否か」というテーマに他なりません。
人類を滅亡に追い込む可能性のあるウイルスに感染している人間を助けることが、これからも続いたはずの人類の歴史を止めることになるかもしれない。

正直言って、見たこともない未来の人類のことを考えるよりも、目の前で苦しんでる人を見捨てない方が簡単ですよ。
その点で、大佐は非常にパワーを要する行動に徹しているとも言えます。MCUで言うところのサノス的なね。


しいて言うなら、このシリーズでずっとテーマになっている「共存」と言う観点が、大佐には抜け落ちているように見えます。

ただ、究極に追い込まれた状態で共存にまで考えを巡らせる余裕があるとは到底思えないんですよね。
川で親と他人が溺れていたら、何も迷うことなく親を助けるもの。

事実、シーザーですら模索はしながらも、共存はできないという判断に至っています。
恐怖や憎しみが次なる戦いを生んでしまう。どこまでいってもこの繰り返し。
この辺りの難しさは、現代の中東情勢を見ていても感じることです。


元祖・猿の惑星を見ていた時に、人間同士の争いが人類をほぼ滅亡状態に追い込んだと解釈していたのですが、新三部作を見ていると「あれ?滅亡の要因は、人類vsエイプによるものなのか?」と、辻褄の合わなさを危惧していたので、最終的に人類同士の争いによって滅亡への道を歩むことになる流れは良かった(?)です。

木に登れたから、雪崩に巻き込まれずにエイプだけが生き残れたという描き方も好きで、人類ほど高度な技術を持っていなくとも、エイプの特性が勝ることがあるということ。海面が上昇すれば海の生き物が支配者になるかもしれない。状況が支配者を変える。

人類にしっぺ返しが来る展開を気持ちよく感じてしまう複雑さよ。
イスケ

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