Masato

猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)のMasatoのレビュー・感想・評価

4.6

Kingdom of the Planet of the apes に向けて復習 2024.05.09

絶滅に追い込まれた人類の哀れな最後の足掻き。最後に殉教者として消えようなどという思考すら傲慢甚だしい。人類はその傲慢さ故に、滅亡するべくして滅亡した種族であることを叩きつける物語。木に登った動物が先祖である人間は絶え、木に登ったエイプが生き残ったという皮肉的なラスト。プロメテウスになろうとした結果自滅するのが人類の最後のシナリオなのだろう。

憎しみと対峙しリーダーたる所以を見出したシーザーの西部劇的ドラマ。実に感動的で納得のシーザー英雄譚の終幕だったことを再確認。渋さもドラマもコミカルさもエンタメもギッチリつまった140分。ここまで完璧だった超大作サーガはなかなかない。

新作で人類はふたたび立ち上がる物語だが、果たして立ち上がっていいのだろうか。人類は愚かでしか無いのに。



↓初見時


ついに最終章

ものすごく良かった。新しい猿の惑星シリーズは毎回テイストが違うから素晴らしい。
シーザーの人間と猿というどっちつかずなアイデンティティを模索し、「エイプ」の誕生と反乱を描いた1作目。猿と人間の対立を描き、現実でも世界で起きている憎しみの無情さを描いた2作目。
本作はシーザーの内面にフォーカスし、2作目にあった「憎悪」のテーマをさらに強調させたものとなっている。

前作にあった2種族間の争いではなく、シーザーの復讐の物語になっている。
なので、映画のテイストが西部劇のような雰囲気になっている。そこに「地獄の黙示録」が加わって古臭く渋い映画だった。(ウディハレルソン演じる大佐は完璧にマーロンブランドを意識している)
シーザーの内面を緻密に描いているので、本作はいままでの人類と猿という俯瞰した描写が少なくなり、シーザーそのものの映画になっていた。
素晴らしいストーリーでアクションでもドラマでも息を飲む展開があって飽きることなく、140分が短く感じた。
なぜ人間は喋れないのか?など、オリジナル版へと繋がる箇所が多くあり、シリーズファンにとっては満足の一作となった。


前作で人間との全面戦争になってしまって、依然人間との対立が絶えない。そこに現れた大佐によってシーザーの家族は殺されてしまう。
シーザーは家族を奪われた憎しみから、守るべきコミュニティを去り復讐の旅へと出かけることとなる。
前作でシーザーは「憎悪」が争いを生み、残るものは哀しいものだけということを実感しているのにも関わらず、あまりにもの怒りから復讐心に囚われてしまった。リーダーとして守るべきものを放棄してしまったことと、「コバ」のように憎しみに囚われてしまったことでシーザーは苦悩する。

猿の惑星ということで何か異質なものを期待するかもしれないが、本作は前作よりも普遍的で人間らしい心理を描いている。


シーザーをモーションアクターで演じたアンディサーキスはこの映画でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされるかもしれないと囁かれている。もしそうなったら映画界に新しい息吹がかかることになる。「ダークナイト」でアメコミ映画が初めてお堅い会員たちに評価されることとなったように、この映画でモーションアクターが会員たちに評価されることになるかもしれない。


非常に見応えのある素晴らしい映画。是非映画館で。
Masato

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