映画スニーカー図鑑

キル・ビル Vol.1の映画スニーカー図鑑のレビュー・感想・評価

キル・ビル Vol.1(2003年製作の映画)
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Onitsuka Tiger Tai Chi (主人公:ブライドが着用)

人物同士のダイアローグを物語の推進剤にする場合、基本的な映画手法のセオリーではウェスト以下はフレームから外されることが多く、人物の足元がわざわざ映されることは珍しい。しかしながら、世界一の“足フェチ”として知られるタランティーノには、そんなセオリーは通用しない。演出としての何らかの意図が有るのか無いのか、よく分からなくなる程に、彼の作品では足元(特に、素足の裏側)がやたらと映される。
主人公:ザ・ブライド(ユマ・サーマン)がこの靴を履くのは終盤、ルーシー・リュー演じるオーレン石井ら一味への復讐を果たすべく、東京の料亭にカチコミを入れに行く一連のシーンから。
映画がフレッシュだったのは、マニアなタランティーノらしいジャンル映画への数えきれないほどの引用......ことさら本作の衣装においては、特に『死亡遊戯』でのブルース・リーにオマージュを捧げた黄色いトラックスーツに、黄色いオニツカを合わせたことだ。それを当時のハリウッドの“ザ・美人トップ女優”だったユマ・サーマンに着せたうえで、千葉真一から授けられた日本刀を片手に大暴れさせた。最凶の右腕:ゴーゴー夕張(栗山千明)に、『グリーン・ホーネット』(ブルース・リーの出世作)のカトー・マスクを着けたクレイジー88と、キャラクター・デザインからして過剰にコミカルでキャンプな世界観を展開するが、最高なのはザ・ブライド対クレイジー88の大立ち回り中、ガラス張りの床越しに主人公の足裏を写したカットだ。“FUCK U”の文字を彫ったカスタムがなされた、太極拳用シューズのアンダーソールが画面にデカデカと映し出されたとき、観客はエクスプロイテーション映画的な世界観を呑み込まざるを得なくなる。
この映画の公開後、黄色はオニツカの鉄板カラーとして定着し、他のモデルをベースにしたコラボモデルも多数販売されている。


衣装デザイン:Kumiko Ogawa, Catherine Marie Thomas
登場・コラボ:どちらも