イチロヲ

眠れる美女のイチロヲのレビュー・感想・評価

眠れる美女(2006年製作の映画)
4.0
交通事故で家族を亡くし、天涯孤独の人生を送っている初老の男が、若い娘と添い寝することができる、秘密クラブに入会する。川端康成の同名小説をドイツのスタジオが映像化している、エロティック・ドラマ。筆者は原作を読了済み。

人物設定とラスト部分に脚色が見られるが、物語の骨子は原作に則している。添い寝ルームを「瞑想の場所」に例えて、去勢された「老人の性」を提起。眠っている娘に聖性を見いだしながら、己の人生を反芻していく。

「生き地獄の中で悩み続けることが人生そのもの」とする原作と比べて、本作では宗教的思想の相違を感じさせるオチがついている。異文化圏における「脚色の妙」を感じ取りながら鑑賞することが可能。

一度きりの人生の中に「充足した性」を如何にして取り込んでいくか、という人生哲学。どうせ将来的に独居爺になるのならば、頃合いを見計らってラブドールを迎えればいいのではないかと、つい楽観視してしまう自分がいる。
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