ゆっけ

みちていくのゆっけのレビュー・感想・評価

みちていく(2014年製作の映画)
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藤沢国際映画祭にて鑑賞しました。

この『みちていく』という映画は立教大学映像身体学科の竹内里紗監督が卒業制作として手掛けた映画です。

正直、かなり驚きました。知らず知らずと学生の卒業制作映画を舐めていたようです。すごく良い映画でした。簡単に言えばモラトリアムな女子高生のもやもやした気持ちがほんの少し晴れていく様子と新月が美しい映画。

上映後の監督を交えての対談でもおっしゃっていたことですが、自分が今できる範囲の中で最高の映画を作ったということがわかる映画でした。キャストも素晴らしいんですよね。何というかこういった自主映画にありがちな素人感がない。自然な演技で引き込まれます。そう、キャラクターを描くのが上手いのです。物語は女子高校生の”何者でもない”自分のアイデンティティーに悶々とする難しい時期を描いたものですが、群像劇になっています。なので、たくさんの人が出てくるのですが、その一人一人が丁寧に描かれています。

主役の2人、「梅本みちる」と「新田舞」。二人は実は監督の友人らしいのですが、監督はこの二人ありきでまず作品作りに走ったと言っていました。脚本を書くにあたってプロットから作らず、この二人が魅力的に映るような設定から、それからその脇を固めてキャラクター作りをされたと。自分の周りにあるつながりを使ってキャスティングされているのですが、どの人も強い印象を持つキャラクターだと思いました。

しっかりとした起承転結があるというわけでは必ずしもないのですが、映像の一つ一つがつながっていく様子が分かる。二人の女子高校生の”満ち足りなさ”が少しだけ”満ち足りていく”、そんなリアルな心情の機微が感じ取れました。

自分が何者であるかを理解した瞬間、目の前に新月が見えて終わる。満ちては、欠けていく。その繰り返しが月なのかもしれないですが、美しく光り輝く瞬間もある。とても綺麗で優しい映画でした。

作品作りにあたってサークルではお互いを叩き合って切磋琢磨して作られたとのことですが、それがとても分かる映画でした。竹内監督はまだ大学院生の1年生でまだ23歳なのですが、来年も卒業にあたり長編を作る予定とのことで次回作もとても楽しみです。


→藤沢国際映画祭を応援!『みちていく』を鑑賞して。 http://yukke1006.com/2015/11/04/fujisawaiff01/
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