朱音

あの日のように抱きしめての朱音のレビュー・感想・評価

あの日のように抱きしめて(2014年製作の映画)
4.5
はじめは夫の気持ちが分からないんです…。妻に似た女性を利用して金儲けを企む一方。小さなメモを取っておき,妻の服や靴なども大切に持っている。妻に呼ばれていた愛称を拒み,遠ざける。面影を求めて妻に似せ,妻を求めるくせに目の前の人がその人だと気づかない。でも観ていくうちに彼の愛に気付いた。そして彼は「気付かない」んではなく「気付いてはいけいけない」と思っていることに…。愛してた。ちゃんと愛していたのに妻を「裏切った」という変えられない事実を,罪悪感から「妻は収容所へ行って死んだ」という事実に置き換えてしまった。そうしないと彼自身が保てなかったのか…。だからこそ不自然なまでに…あれほど核心に迫るまで彼女だと気付かない。
ネリ-が過去の自分のことを「彼女」と呼んで別人と考えてる反面,夫が語る想い出を聞く事で夫の愛を確認する。夫は想い出を大切にし,真似をされれば激昂する。でも激昂出来るほど妻を愛してたんだって。あの時代…「愛」だけではどうしようもなく…避けられなかった別れ。彼が今抱きしめているのは「妻としてのネリ-」なのか「他人のネリ-」なのか…。切なすぎて,脆すぎて愛溢れた作品。
朱音

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