うっちー

無頼漢 渇いた罪のうっちーのレビュー・感想・評価

無頼漢 渇いた罪(2015年製作の映画)
3.8
観ていて何か既視感があった。大昔、学生時代に観た、昼ドラの、ちょっと裏世界ものとか。身を持ち崩した女が、それでも結構やくざ者やら板前とかにモテて、揺れ動く。で、何かの拍子に刃物沙汰を起こす、とか。たぶん東海テレビあたりの制作で、こんなのがあった気がして。一見ノワール、だけどそれだけじゃない。じとっと湿度が高い恋愛ドラマだと思う。だけど甘くなくて、キリッと辛口。無駄な説明台詞がなく、ツンデレな感じも、無頼漢というタイトルにぴったり。ともかくめちゃ好みだった。

あるホシを追う刑事が、そのホシの女に接近し、職場であるカラオケバーに潜入し、付き従ううちに、女に情が移って、という筋。とってもシンプル。
水商売街、雑居ビル、裏路地などいなたい景色ばかり出てくるが、どこも人が少なく、どこかレトロ。その風景をずーっと掬い取るようなカメラワークで切り取ってるので、なんだかヨーロッパ映画みたいに思えてくる。また、弦楽多用のクラシック〜現代音楽〜タンゴみたいなラテン風音楽が入り混じる音楽のクオリティーが異様に高く、俄然アーティスティックな印象が高くなる。『オールド・ボーイ』などを手がけた方がやっているらしく、合点が行く。

俳優たちも満遍なく素晴らしい。刑事にキム・ナムギル(こんなカッコいいんだ、びっくり。『殺人者の記憶法』では怖い印象のが強かった。あの胸の傷が……!)、女はチョン・ドヨン(裸になるわ、ややババ風お水メイクで化けるわ、ノーメイク見せるわ。でもツンデレで余裕かましてる)、ホシはパク・ソンウン(裸でます。ガタイがよく、強く、声低い!)、脇にはクァク・ドウォンまで出てくる。強い。

突っ張って強い女風だったドヨン演じるヘギョンが、どんどん落ちて、不幸の上塗りになっていくのが辛くて。そして最後の衝撃。でも、私はジェゴン君は余裕で助かると思う、なぜか笑。
好きなのに、その気持ちを通せない汚れちまった大人たち。絡み合う愛憎に、魅せられました。ため息。
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