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神のゆらぎのrpmu90377のレビュー・感想・評価

神のゆらぎ(2014年製作の映画)
3.7
看護師の女性とそのフィアンセの男性はともにエホバの証人の信者だ。男性は末期の白血病を患っていながらも宗教上の理由から輸血を受けることを拒み続け治療を受けようとしない。ある日、飛行機の墜落事故が発生し瀕死の患者が病院に運び込まれてくる。看護師はその血液型が患者のものと一致しているという理由で患者に輸血することを求められる。輸血すれば戒律を破ることになり、フィアンセからも見放されることになる。医療従事者としての任務を果たすのか、自らの信心を貫き通すのか、彼女は難しい選択を迫られることになる。

看護師のエピソードの他に複数のエピソードが描かれる。老境にありながら情熱的な不倫を続けるカジノのバーテンの男とクロークの女。互いへの失望を抱きながら共に暮らすアル中の妻とギャ ンブル狂の夫。そして取り返しのつかない過ちを償うためドラッグの運び屋となるひとりの男。異なるエピソードは最終的には飛行機の墜落事故で交錯することになるが、後半、これらのエピソードは同時進行しているものではないことに気づかされる。時間軸を利用した構成で観客をあっと言わせて物語を印象付ける手法は、クリストファー・ノーランの「TENET」に通じるものがある(あれほど難解ではないけれど)。

妻を寝取られた老人が言う「飛行機の墜落事故が起きるのは全能の神など存在しないから」というセリフがキーポイント。この世の中で起きることは神の意思によるものなのか、それとも単なる偶然なのか。いずれにしても、自分の行いが気付かないところで他人の運命に影響を与えているというメッセージが興味深い。「神のゆらぎ」という邦題、なかなか意味深長だ。
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