悪魔の毒々クチビル

バトルヒートの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

バトルヒート(2015年製作の映画)
3.8
「貴様こそ地獄で腐ってろ!!」

人身売買組織に家族を殺された刑事が復讐するお話。

アメリカ/タイの合作アクション映画です。
主演は脚本も携わったドルフ・ラングレン。
脇を固めるのはトニー・ジャー、マイケル・ジェイ・ホワイト、ロン・パールマン、ピーター・ウェラーと中々の面子。

序盤からトニジャのかっけぇアクションが拝めてニッコリ。
一応アクション映画として観られる作品ですが、原題が"Skin Trade"と主に売春関連の人身売買を意味する言葉である事からお察しの通り、この手の犯罪を扱った内容で作風もシリアス路線です。
途中でコンテナの中で運ばれている最中に死亡した女の子たちや、まるで家畜のようなケージの中に閉じ込められた女の子たちが発見されるシーンとかは生々しかったです。
ただシリアスな割には脚本がちょいと雑だし展開もはしょり気味なのは頂けないかな。
例えばドルフ演じる主人公のニックがタイで追手から逃げる時に、民家に身を隠すんだけどそこの一家からすれば言葉も通じない傷だらけの筋肉モリモリマッチョマンが家に押しかけて来たら相当怖い筈なのに、一瞬びっくりしただけですぐ受け入れちゃうし。
あと大規模な爆発シーンやヘリが墜落した時のCGがショボかったです。

題材の関係上、組織側には一切容赦なくてニックはまだ私怨による復讐だからって動機はありますが、トニジャ(役名もトニー)まで一応刑事なのに勝手にバンバン蹴り殺したり落としたりしていましたが、そんな片っ端から殺っても良いのだろうか。

途中でトニーの相棒殺しの濡れ衣を着させられたニックとのバトルがありますが、如何せんドルフがあまり動けていなかったです。
トニジャはムエタイの動きを駆使したアクロバティックな技の連発でアクション面で大きく貢献してくれていましたが、彼の動きが凄ければ凄いほどドルフと差が出てしまっていました。
まぁドルフもシンプルにマッチョパワーでトニジャと互角には戦っていましたが。
タイの街中でニックを追い掛けるトニジャが車の下を潜ったりと「マッハ!!!」っぽいシーンがあるのもニクいね。
ここのくだりでトニーが勢いあまって通行人のおばさんにぶつかって、このおばさんがまぁまぁ派手なぶっ飛び方していたんだけどあの場面いる?

しかしながら後半のトニー・ジャーvsマイケル・ジェイ・ホワイトはとても良かったですね。
今回のMJWはちゃんと動けるコンディションでしたし、トニジャの飛び膝蹴りを圧倒的リーチを誇る蹴りで制圧していて格好良かったです。
「これぞマッスルアーマー!!」と云わんばかりにトニジャの蹴りを胴体で弾き返す脳筋ディフェンスも良いね!
二人の脚技の応酬も見応えあったし、トニジャの体格差に食らい付く様な打撃も最高で取り敢えずこのシーンが観られた時点で今作には良作認定出ちゃうよね。

終盤、ニックとトニーが敵のアジトに乗り込んで「コマンドー」ばりに暴れるシーンでも銃撃戦メインながら、やはりトニジャのアクロバティックアクションが一番印象的でした。

組織のボスはロン・パールマンですが、知らない間に貫禄と個性が上手く共存した顔付きになりましたねぇ。
ラストはニックとタイマン張りますが、これまでのトニジャに全部持って行かれてしまってちょっと地味でした。
ピーター・ウェラーはニックの上司役で出番は前半のみでしたが、相変わらず声が渋くて格好良いですね。

ラストはこの手の主人公設定にしては意外な終わり方で、これも失くならない人身売買の恐怖を強調する為なのかは知りませんが、結果として観ている側はモヤモヤが残るし、前半のとある会話に矛盾が生じてしまった気がするので個人的にはイマイチでした。

主演はドルフ・ラングレンでも結果的にこれはトニー・ジャー映画な気がする。
てな訳で細かい所が弱かったけどトニジャとMJWが大変よろしかったので、観て良かったです。