グラッデン

ロブスターのグラッデンのレビュー・感想・評価

ロブスター(2015年製作の映画)
4.3
妻に捨てられた主人公・デヴィッドは、自宅から郊外にある施設に連行される。彼のように様々な事情で「独身者」になった男女が集められた施設では、与えられた45日間でパートナーを見つけなければならないルールがある。さらに、期間内にパートナーを見つけられなかった者は動物に変身させられることになり、猶予期間を延長するには、毎日行われる狩りで森に潜む「独身者」を捕獲しなければならない。

SFっぽさも醸し出す徹底された管理社会を舞台に、人との繋がり方を描いた作品。独身者を徹底的に排除する社会環境に適応するため、自分を偽って近づく者もいれば、利害関係を強調して近づく者もおり、何かに共通点を見出したことで距離を縮める者もいる。特にパートナーとの繋がりを見出す上で、共通項を作ることを重要視する行動原理が明らかになってきて、非常に興味深かったです。

たしかに、世界観だけで見れば「異常さ」が際立つ設定ではありますが、その中で繰り広げられる人と人の関係性については、現代社会にも通じるものがあると感じました。

また、本作では、パートナーたちが暮らす「街」、独身者がパートナーを見つける「施設」、そして逃げ出した独身者が潜む「森」の3つのエリアに分けられます。本作における独身者は、その世界においては社会のルールに背く反社会的勢力ではありますが、森に潜むことによって、独身であり続けることが出来ます。ただし、森の中にもルールと罰則が設けられています。コミュニティの中に社会があるということを示していると思いますし、独身であることもまた規律の中で担保された権利であることを示されていました。そこもまた興味深い描写ではありました。

独り身を楽しんでる人間には苦笑いしたり、妙に共感したり、少し応援したくなるような映画でした。この手の設定自体は好きですし、その中での駆け引きなどを含めて非常に面白かったです。