三樹夫

ロブスターの三樹夫のレビュー・感想・評価

ロブスター(2015年製作の映画)
3.7
独身者は全員強制的にホテルに缶詰めにされ、45日以内にパートナーを見つけないと動物に変えられてしまうという不条理コメディ恋愛映画。どの動物に変えられるかは本人が選ぶことができ、主人公はロブスターを選択する。
45日以内にパートナーを見つけないと動物に変えられるって何?と不条理な設定だが、私だったらネコを選ぶかなとか思っちゃった。こういうのって無意識に参加しちゃうのが不思議。『ムカデ人間』も観てて真ん中だけは嫌だなとか思っちゃうし。
不条理設定をドカンとかます映画だがそれなりに法則があるらしく、ハンティングで人間を一人狩るごとに動物に変えられる猶予期間が1日延びる。こうなってくると観てるこっちも何らかの法則性を探しちゃうので、感覚的にはさや香の「見せ算」を見てるような気持ちになる。
前半は結婚カルトともいうべきホテルでの監禁生活で、後半はホテルから脱走して、レジスタンスを築いて森の中で生活している独身集団に身を寄せることになる。ただこの集団も独身カルトみたいな集団で、結婚派も独身派もどっちもカルトで見事に中間がない。独身カルトでは恋愛禁止でイチャつくと総括される。

話だけ抜け出すとディストピアものとして『ブラック・ミラー』の1エピソードであっても全く不思議ではない。というかこの脚本のまんま『ブラック・ミラー』に持っていけるぐらいだが、やはり監督の演出如何で作品の印象は変わる。チェンジアップ的な笑いをバシバシ入れてきており、演奏聴きながら思いっきりキスしだすシーンは、さすがにバレるぞと心の中でツッコミが入るコメディとして分かりやすい。
不条理な設定の中にぶち込むことで見えてくるものがどうやらあるらしく、パートナーに合わせて偽りで鼻血を出して結婚する男が出てきて、主人公はこいつの鼻血はウソだぞとチクリだし仲違いを期待するが、あのさぁそういうことじゃないんだよと主人公の非モテ感が高まる。
どういう結末になるのかは観客に委ねられるが、その人の恋愛観とか結婚観が反映された答えになりそうなので、わりかしカップルで観て楽しめる映画なのかもしれない。
三樹夫

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