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ロブスターのshioのレビュー・感想・評価

ロブスター(2015年製作の映画)
3.6
「狂っているのは、僕か、世界か?」
ー JOKER

「哀れなるものたち」が話題なので
同監督の作品を見てみた。

初期設定がぶっ飛んでて
それにかまけていない展開力もあったが
いかんせん何か物足りない感が残る。

ストーリー的に多くを語らない部分が多いので
オシャレすぎて興味が持てないブランド品
みたいな映画だった。


恋愛するキッカケが
共通点しかないという切り口は
非常に興味深い。

マッチングアプリでも
共通の趣味で検索がかけれる時代。

ただ今作では
近視、鼻血、足が悪いなどが共通点として
採用されているのがなんともカルト的。

近視という共通点を失った主人公が
「ドイツ語習ってた?」「ピアノは?」などと
共通点探しに躍起になる姿は
とても心が痛くなった。


ロブスターというタイトルについて
自分なりに考察してみた。

ロブスターには寿命が存在しないらしい。
脱皮する時に臓器も新しくなって
退化しないからだとか。
なので死ぬ理由は外的要因による捕食のみ。

ロブスターになりたいという主人公は
最初パートナーを探すためにホテルに来る。
そこで自分にはパートナーが不要と
悟った主人公は
今度は独身コミュニティに属する。
そこで今度は理想のパートナーを見つけ
秘密の愛を育む…

両極端な思想を持った
コミュニティであることを差っ引いても
主人公の考え方は二転三転しているのだ。

どちらのコミュニティにも属することができない
主人公は、今風に言えば「社会不適合者」

社会不適合者の根源には
「自己愛」がある。

自分が可愛いから自分に甘いし
傷つきたくないからプライドが高い。

逃亡という選択肢をとれるのは
ある意味、長生きするロブスターの
暗喩かもしれないが、
余韻のあるラストも
結局突き立てたナイフを
刺せないまま近視の女から逃げたのだと思います。

ナレーションの声が最初から最後まで
近視の女の声だったのは主人公は逃亡して
もう居ないから。

もしかしたら
食べると美味しいロブスターになりたいのは
自己評価の高さかもしれません。
「出会いがないだけで俺はモテる」って
言ってるタイプ。


こんなこと書いておきながら
自分もこの解釈と一致する部分が
多いので辛いです…
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