幌舞さば緒

ちはやふる 上の句の幌舞さば緒のネタバレレビュー・内容・結末

ちはやふる 上の句(2016年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

〝ちは〟という自分の名の入った札を扱う遊戯、小学生の頃にアラタが楽しさを教えてくれた〝かるた〟しか勝たん!の綾瀬千早と、思い人の千早が夢中になってることなら俺もやるしか道はねえ!女?〝ちは〟しか勝たん!な真島太一。両者、原作同様に動向を追って行きたくなるのだけれど、【ちはやふる上の句】の中で自分が最も魅力を感じてしまう人物は、競技かるた経験者3名、百人一首オタク1名の言わば強豪チームの素質がある輪の中に突如ぽつんと加わることになる未経験者、机くんこと駒野勉である。彼の、〝部の4人〟と〝かるた〟に出会うまで感じることのなかった喜びと痛みに向き合い、成長していく様が原作以上に刺さる。それと、太一vsヒョロの運命線での太一の、窮地の願掛けではない思考と立振舞がエクセレント。すべての物事に共通する勝率と可能性を上げるための思考と動作ここにあり。


台詞メモ

「ありがとな。かるた一緒にしてくれて。でも多分、もう会えん」「なんで?私たちにはかるたがあるからまた会えるんじゃないの?続けてたらまた会える。絶対会えるよ」

「私の手元に最後まで残ってた札、〝たれをかも〟だった。昔の友達はもういないって意味なんだって。でも、私は今でも3人はチームだと思ってるよ。かるたをやってても、やってなくても。見ててタイチ。私かるた部作ったら瑞沢をかるたの名門にするの。部員もいっぱい増やして卒業してからも後輩にかるた教えに来たり。かるたの楽しさとかアラタの熱をもっともっと色んな人に知ってほしいんだ」

「少ない言葉の中に色んな読み方ができるから歌は面白いんです。五七五七七は今で言えばたった31文字のツイートのようなもの。…どうかしました?」「真っ赤になった…頭の中が真っ赤になった。凄い。凄い凄い凄い!ねぇもっと教えて!」「難しいイメージのある百人一首も実は43首が恋の歌なんです。1000年前の人も恋や愛に真剣に悩んでいたかと思うとなんだか急に身近に感じられませんか?」「一緒にかるたやろ」「もっともっとみんなにも知ってもらおうよ。カナちゃんの大好きな歌のこと」

「川の流れは岩に当たって二つに割れてもいずれまた一つに戻るもんや」「〝瀬を早み〟か」「すまんのぉアラタ。まさかじいちゃんがその岩になるなんて」「なんも気にせんくていいよ。かるたをしてればまたきっと会える。あいつらとそう約束したんや」

「この道40年。今も名人目指してます」

「来ないかと思ってた」「フリだって言ってるだろ」「そうだったな」「それに、初めてだったから」「何が?」「僕しかいないって言われたのは」

「なんなのアンタ、鬼強じゃん」「一人でずっと練習してたから」「一人で?」「かるたで名人になるのが俺の夢なんや」「夢って…なんで?なんで名人?」「だって、かるたで日本一になれば、それは世界で一番ってことやろ?」

「お互いに最後の一枚になった状態、これを運命線と呼ぶ。こうなったらもうどっちの札が先に詠まれるかで勝敗が決まると言っていい。誰だって自分の手元にある札を押さえる方が簡単だからな。ごらん、その名の通り運に任せるしかない」

「みんな何言ってるの?自分よりも強い相手がいないとでも思ってたわけ!?綾瀬!飛び出しが早い!もうお手つきも一番多い。お手つきは無条件で2枚差つくから勝てる試合も勝てないよ?真島!真島は素振りを全くしないよね?恥ずかしがってる場合じゃないよ。札との距離感をもっと体に叩き込んで。肉まん君!肉まん君は女の子が相手だと非常に勝率が下がる。かるたに男女の区別はないだから鼻の下伸ばす前に手を伸ばして」

「本当に歌が好きなんだね」「百人一首のことを考えると時を超えても変わらない人の想いにいつも圧倒されちゃいます」「大江さん、俺自分で分かってるんだ。俺がいつ神様に見放されたのかを」「部長、自分で分かってるならそれで十分ですよきっと。それと、恋は身近にいる者の方が有利だと思います。応援してますから」

「さっきの囲い手破り力み過ぎ。もっと力抜いて。手首のスナップで」

「自陣はいいけど、敵陣を抜きに行く時はもっと突っ込んで行かないと取れないよ。思いっきり身体ごと行かないと」

「〝もろともに〟は、とあるお坊さんが独り孤独な修行に耐えていた時に詠んだと言われてます。山に一本だけ咲いていた桜に向かって独りぼっち同士仲良くしようって呼びかけた。ちょっと寂しげな歌ですね。もろともに哀れと思え山桜、花より他に知る人もなし」「私はちっとも寂しくないよ。私には強い絆の歌に聞こえるなあ。あなたがいれば私は頑張れる。だから、もっともっと深くわかり合いたいって。絶対勝とうね、明日」

「〝ちはやぶる〟とくれば必ず神様がその後に来るからな。機動戦士とくりゃあガンダムみたいなもんだな」

「アイツ、凄かった。本当に。それではっきり分かったんです。青春全部賭けたって俺はアイツに勝てないって」「それはかるたのこと?」「それもあるけど、新は、千早を俺と二人のもんだって多分思ってる。それなのに俺、千早を追って瑞沢入って、かるた部創ったのだって少しでも千早の側にいたかっただけで。別にかるたが好きとかそういうんじゃ…すいません。かるたの先生にこんな」「いや、なんとなく気がついてたよ」「そういう奴なんです俺。出し抜いて、騙して、盗んで、隠して。いくらお願いしたってそんな奴に神様は…〝ちはやぶる〟は振り向いてくれませんよね」「まつげ君、〝このたびは〟って歌、知ってるだろ?お供え物を用意できなくて、せめてもの代わりに紅葉を供えますから、あとのご判断は神様にお任せしますっていう歌」「このたびはぬさもとりあへず手向山。紅葉の錦、神のまにまに」「神様だの運だのを語っていいのは、やれることを全部やった人間だけの特権なんじゃないかな。青春全部賭けたって勝てない?まつげ君、賭けてから言いなさい」

「数合わせだったんだろ!机くんしかいないとか調子のいいこと言っといて!本当は誰でも良かったんだ僕じゃなくても!」「そんなつもりで言ったんじゃないよ。私は本気で机くんとかるたがやりたくて」「やんなきゃ良かったよ…かるたなんて。前みたいにひとりでいればこんな気持ちにならなかったのに。僕には、かるたの才能がないんだよ。きっとこの先も役になんか立てない」「才能なんて俺だってねーよ。苦しいけどやってんだ。逃げたいけどやってんだよ。そうすればいつか、超えられる気がするから」

「俺たちはきっと個人戦の気持ちのまま団体戦をやってたんだ。まだチームになりきれてないんだよ」

「千早、もう大丈夫だ。俺たちを信じて自由になれ」

「神様、お願いだ。もう一生運悪くていい。だから今…今だけ、この一回だけ!」

「(そうじゃない…)失礼しました」「素振りしない真島が…」「敵陣を抜く気か」「運命線で?」「太一…」「そうだ。来ないと分かっているなら取りに行け!」「取る…取る…〝ちは〟を取る!」「千早ちゃん、見ててあげてください。部長の運命」
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