グラッデン

ちはやふる 上の句のグラッデンのレビュー・感想・評価

ちはやふる 上の句(2016年製作の映画)
4.1
小倉百人一首を用いた競技かるたに情熱をかける高校生たちの物語。原作・アニメ版ともに未読・未視聴でしたが、今回の映画で初めて物語に触れて楽しむことができました。
音楽や芸術分野、あるいは本作のような文化系部活と「努力・友情・勝利」のジャンプ三原則の相性が良いということに感じたのは最近のことです。たしかに、2000年以降のジャンプ自体も三原則の適用をスポーツやバトルに限らず、様々なジャンルに適用させてヒット作を生み出してきましたので、この力学が応用して使えることは実証されていたと思うのですが、近年の様々な映像作品との出会いが、その認識が一層強くしたと思います。

余談が長くなりましたが、本作もまさにこうしたアプローチに通ずる熱血スポ根路線を下敷きとした「熱量」と青春映画の「爽やかさ」が混在する作品だったと思います。競技への真摯な姿勢を部活動という枠組みにはめ込めるアドバンテージもありますが、作中の描写を見ても、双方のバランスを上手く配分して構成されていたのは好印象でした。

こうした作品の雰囲気を象徴するような存在だったのが、広瀬すず演じる主人公・千早だったと思います。ピッチもとい畳の上ではド迫力のプレイを披露し、競技から離れれば観客の目を惹きつけるような愛らしさを表現しています。
競技終了とともに電源が切れたように停止する千早ではありませんが、意図的にオン・オフの描写を使い分けていたのは感じとれました。広瀬さんが過去に演じたキャラでも珍しい役柄だったと思っておりますが、過去の出演作と比較すると「解き放たれた」印象を受けます(笑)また、冒頭の現場作業員風の姿にも代表されるように、男子風の仕草のフィット感は彼女の武器かもしれません。

一方、作中に登場するキャラの役割・描き方を見ると、キャラと物語のバランス感覚が取れている作品だと思いました。登場するキャラがしっかりと立っていて、若い演者がそれぞれ良い味を出していたと思います。特に「東宝からの刺客」(笑)上白石萌音さん演じる奏が最高で、緩急をつけた物言いで心の距離感を詰めていく曲者ぶりを好演しておりました。

ある程度はティーンズ向けの作品ではあると思いますが、おっさんにも楽しめたのは、冒頭にも書いたようにジャンプ三原則の力学があったことと、ヒロインという個人ではなくチームを描いた作品として成立していたからだと思います。後編「下の句」も楽しみです(ボスキャラ演じる松岡茉優さんを含めて)。