kogureawesome

人生タクシーのkogureawesomeのレビュー・感想・評価

人生タクシー(2015年製作の映画)
4.5
キアロスタミ監督の弟子にあたるジャファール・パナヒ監督は、映画の中でイランの政治体制を批判したとして2010年、20年間映画製作・脚本執筆・メディア対応と海外渡航が禁止された。

そのパナヒ監督がタクシー1台で、乗って来る人達と運転してる自分を撮影した映画がこの作品だ。2015年製作。

2022年7月11日に治安関連の容疑で逮捕された他の映画監督2人について調べるためテヘランの検察庁を訪れた際、拘束され、2010年に言い渡された禁固刑が執行され、現在(2022年10月1日)収監中だ。

ワンシュチュエーションで次々に乗ったり降りたりする人達(人だけでは無く金魚も!)が、話す言葉が、いろいろな問いかけを観客にしてくる。
ドキュメンタリー風だが、よく考えられた脚本と、演出が、お金が無くても、自由が無くても、どんな制約があっても、映画は作れるという勇気を見せられたと感じた。

途中から出てくる姪のハナちゃんがいい味出して映画にドライブがかかる。

印象に残ったセリフは大学で映画を学んでいる青年が「どの映画が見る価値がありますか?」と聞いてくる。
監督は「どんな映画も観る価値はある。あとは好みの問題だよ」と答える。
「どんな題材の映画を作るか悩んで、たくさんの映画を観ました。本も読みました。それでも題材が見つかりません」と相談すると
「どの映画ももう作られていて、どの本ももう書かれたものだ。何を題材にするかは誰も教えられ無い。自分で見つけるしか無いんだ。自分にしか見つけられないんだ」と答える。

キアロスタミのDNAはパナヒ監督に受け継がれていると、観ている間、何度も思った。
そして、パナヒ監督はキアロスタミ監督とはまた違う魅力も確実に持っていると同じくらい思った。
kogureawesome

kogureawesome