糸くず

人生タクシーの糸くずのレビュー・感想・評価

人生タクシー(2015年製作の映画)
3.8
強盗で始まり、強盗で終わる。小粒でもピリリと辛い皮肉としたたかさが効いている映画。

誰が役者で誰が本物の乗客なのかわからないことで生まれる、現実と虚構の境界線がごちゃごちゃになる映画ならではの面白さもいいけど、やっぱり所々で噴出する政府への怒りが心に響く。

冒頭の死刑を巡る議論、女性弁護士によるストレートな批判、そして何より監督の姪(とてもかわいくて憎たらしい!)による痛烈な皮肉の数々。隣人の家の娘にサウジアラビア人の恋人が来たのを撮影した話、クズ拾いの少年に「渡してよ!」って必死に念を送る様に笑いながらも、「これは〈映画を撮ることを禁止された映画監督〉の映画なのだ」ということに思いが至ると、単純に笑えなくなってくる。

日本もかなりきな臭い世の中になってきているわけだけども、十分とは言えないにしても、見る自由も作る自由もある程度保障されているのだから、日々自由を楽しまねばなぁと思う。
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